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"大学生の年代は多様な精神保健上の問題が発生するため,一次および2次予防を中心とした大学精神保健対策は,学業の円滑な遂行を支援する上でも重要な課題となっている。そのためには,精神保健上の問題を有するか,または将来発生する可能性が高い学生を早期に把握し,精神保健の専門的サポートを行うことが重要である。またその際に,サポートの対象となる学生を的確に把握する方法として,高い感度と特異度を有するスクリーニング基準の確立が求められている。本論では,本学人間福祉学部への2002年度入学者231名を対象に実施したUPI(大学精神健康調査)の結果と,その後の精神保健上の問題発生ならびに学業遂行状況との関連性を検討した。その結果,心理的問題で学生相談室を利用した者や精神疾患を持つ者は,そうでない者と比較してUPIの得点が高く,また学業の遂行に問題があった者も,そうでない者と比較してUPIの得点が高い傾向が明らかとなった。", "subitem_description_type": "Abstract"}]}, "item_10002_full_name_26": {"attribute_name": "著者別名", "attribute_value_mlt": [{"nameIdentifiers": [{"nameIdentifier": "173", "nameIdentifierScheme": "WEKO"}], "names": [{"name": "Nakagawa, Masatoshi"}]}, {"nameIdentifiers": [{"nameIdentifier": "15", "nameIdentifierScheme": "WEKO"}], "names": [{"name": "Araki, Chineko"}]}, {"nameIdentifiers": [{"nameIdentifier": "16", "nameIdentifierScheme": "WEKO"}], "names": [{"name": "Hira, Keiko"}]}]}, "item_10002_textarea_29": {"attribute_name": "内容記述", "attribute_value_mlt": [{"subitem_textarea_value": "UPI(大学精神健康調査)とその後の心理的問題の発生および学業遂行との関連性に関する研究\r\n\r\nI はじめに\r\n 大学生の年代は,心理的発達段階における青年期後期に相当し,発達課題である自我同一性の確立に加えて,現実には職業選択や自立が迫られる。またこの時期は,自我同一性拡散状態と関連した様々な心理的問題が発生することに留まらず,種々の精神疾患の好発年齢にも相当する。これらの精神保健上の問題の発生は,学業の遂行にも影響すると推察され,その一次および二次予防対策は大学精神保健上の大きな課題となっている。\r\n 以上の問題意識に基づき, 1966年に全国大学保健管理協会により開発されたUniver-sity Personality Inventory (大学精神健康調査,以下UPIと略す)は,開発後40年を経た現在でも,多くの大学において精神的健康状態を把握する指標として活用されている。UPIは質問紙法による心理テストであり,その内容は大学生活で不適応をきたしそうな性格傾向,神経症傾向,抑うつ傾向,統合失調症的傾向などの有無を問うことを意図した56の質問項目と,「虚構尺度」とよばれる4つの質問項目の,計60項目から構成されている1・5)(附表参照)。\r\n しかしながら, UPIのスクリーニングテストとしての種々の問題点も指摘されており2・3),他のスクリーニング基準への変更や併用も視野に入れた検討が迫られている。\r\n 本学では,学生の精神的健康状態を把握し,その後の大学精神保健活動の一助とする目的で,第一期生に当たる2002年度入学の人間福祉学部生全員を対象として,入学直後に本テストを試行的に実施した。第一期生が卒業し,その後の大学生活の経過が明らかとなった現在, UPIの検査結果と在学中の心理的問題や精神疾患の発生ならびに学業遂行状況との関連性を検討したい。\r\n\r\nⅡ 対象と方法\r\n1.対象\r\n対象は,2002年度に本学人間福祉学部に入学した者231名である。\r\n 2.方法\r\n 1)調査方法\r\n (1)UPI\r\n 2002年4月中に,人間福祉学部の必修科目である「基礎演習」の授業時間中に実施した。実施に当たり,担当教員に対し事前にUPIの実施要領を配布し,検査内容や実施方法に関する説明を行った。実施方法については,科目担当教員が学生に対し検査について説明を行った後,質問用紙を配布し,回収は担当教員自らが行うか,あるいは各自が指定のメールボックスに投入する方法を学生に選択させた。回答に関しては,各項目につき「はい」か「いいえ」のどちらかに○をつけ,どうしても回答に迷う時のみ中間に△を記入するよう指示した。\r\n (2)学生相談室利用状況\r\n 対象者全員について, 2002年4月より2006年3月までの4年間の学生相談室利用状況を相談記録や台帳を基に調査した。加えて学生相談室を利用した者については,その来談理由を調査した。\r\n 2)分析方法\r\n (1)UPIの分析\r\n UPIの各項目につき,「はい」を1点,「どちらでもない」を0.5点,「いいえ」をO点と点数化し,各項目の得点,総得点(60項目の合計点),粗点(総得点より「虚構尺度」である項目番号5, 20, 35, 50の4項目の得点を減じた得点),S得点(項目番号10, 11,14, 16, 13, 24, 26, 27, 28, 36, 40, 41, 43, 51, 55, 56, 57, 58, 59の19項目の合計得点),D得点(項目番号11, 12, 13, 14, 15, 16, 22, 25, 28, 43, 44, 45の12項目の合計得点),N得点(項目番号16, 19, 23, 27, 31, 32, 36, 38, 39, 45, 47, 51, 52,53, 54, 55, 57, 58, 60の19項目の合計得点)の平均点と標準偏差を算出した。またこれらの性差を検討した。\r\n (2)学生相談室の利用とその目的に関する分析\r\n 対象者を,4年間に学生相談室を「利用した者」と「利用しなかった者」に2分し,性別および学科・コース別の比率の差を検討した。\r\n また「利用した者」をその利用目的別に,精神疾患に関する相談(ICD-10の「精神および行動の障害」に該当する疾患に関する相談),精神疾患と診断されない程度の心理的問題に関する相談,対人関係に関する相談,家族関係に関する相談,異性関係に関する相談,心理検査の希望,職業相談,教育相談,その他に分類し,その内訳を分析した。\r\n (3)学生相談室の利用および精神疾患の有無別のUPIの比較\r\n 学生相談室を「利用した者」と「利用しなかった者」の2群における, UPI各項目の得点,総得点,粗点,S得点,D得点,N得点の差を検討した。また学生相談室を「利用した者」と「利用しなかった者」における, UPIの粗点が「20点以上の者」と「20点未満の者」の比率の差を検討した。同様の分析を「30点以上の者」と「30点未満の者」についても行った。\r\n さらに,学生相談室利用者のうち,精神疾患に関する相談者を「精神疾患のある者」とし,それ以外の全対象者を「それ以外の者」として,2群におけるUPI各項目の得点,総得点,粗点,S得点,F得点,N得点の差を検討した。また「精神疾患のある者」と「それ以外の者」における, UPIの粗点が「20点以上の者」と「20点未満の者」の比率の差を検討した。同様の分析を「30点以上の者」と「30点未満の者」についても行った。\r\n (4)学業遂行状況別のUPIの比較\r\n 対象者のうち,退学,転学,留年のいずれかに相当した者を,「4年間で卒業に至らなかった群」として,「4年間で卒業に至った群」との2群間におけるUPIの各項目の得点,総得点,S得点,D得点,N得点の差を検討した。また2群間で, UPIの粗点が「20点以上の者」と寸20点未満の者」の比率の差を検討した。同様の分析を「30点以上の者」と「30点未満の者」についても行った。\r\n (5)学業遂行状況と諸要因との関連性の分析\r\n 「4年間で卒業に至った群」と「4年間で卒業に至らなかった群」における,男女比ならびに学生相談室を「利用した者」と「利用しなかった者」の比率,「精神疾患のある者」と「それ以外の者」の比率の差を検討した。\r\n (6)学生相談室を「利用しなかった者」に関する分析\r\n 学生相談室を「利用しなかった者」に限定して,「4年間で卒業に至った群」と「4年間で卒業に至らなかった群」の2群における, UPIの各項目の得点,総得点,粗点,S得点,D得点,N得点の差を検討した。また両群における, UPIの粗点が「20点以上の者」と「20点未満の者」の比率の差および「30点以上の者」と「30点未満の者」の比率の差も検討した。\r\n (7)「虚偽尺度」に関する分析\r\n 「虚構尺度」の解釈を再検討する目的で,粗点と「虚偽尺度」4項目の合計点の相関関係を検討した。また粗点が「20点以上の者」と「20点未満の者」および「30点以上の者」と「30点未満の者」における「虚偽尺度」4項目の合計点の差を検討した。\r\n 以上の統計解析には, Mann-WhitneyのU検定,χ2検定(該当人数が5名未満の項目がある場合にはFisherの直接法を使用)およびPearsonの積率法を用い,両側検定で5%未満の水準を有意とした。解析ソフトウェアはSPSS Version 12.0 J for Windowsを使用した。\r\n\r\nⅢ 結果\r\n 1. UPIの分析\r\n UPI施行対象者231名中,回答者は217名(男性93名,女性124名)であり,有効回答率は93.9%であった。各項目の得点,総得点,粗点,S得点,D得点,N得点の平均点と標準偏差を表1に示す。各項目において平均点が高い上位10項目は,①気分が明るい,②くびずじや肩がこる,③なんとなく不安である,④いつも活動的である,⑤気疲れがする,⑥他人の視線が気になる,⑦いつも体の調子がよい,⑧記憶力が低下している,⑨気分に波がありすぎる,⑩考えがまとまらない,であった。また性別比較では,「わけもなく便秘や下痢をしやすい」,「くびすじや肩がこる」の2項目で女性の得点が有意に高く(それぞれP=.002, P =.020),「こだわりすぎる」,「くり返し,確かめないと苦しい」,「汚れが気になって困る」の3項目では男性の得点が有意に高かった(それぞれP=.019,P=.036, P=.013)。しかしながら,総得点,粗点,S得点,D得点,N得点において,有意な性差は認められなかった(表2)。\r\n 2.学生相談室の利用とその目的に関する分析\r\n 4年間の学生相談室利用者実数は56名で,利用率は24.2%であった。学生相談室を「利用した者」は「利用しなかった者」と比較して,女性の比率が有意に高く(P=.001),また両群間において学科・コース別の比率に有意差が認められた(P=.001)。特に介護福祉専攻で学生相談室の利用者が少なかった(表3)。\r\n 学生相談室利用者の利用目的では,対人関係に関する相談が10名と一番多く,精神疾患に関する相談9名,心理検査の希望8名,精神疾患と診断されない程度の心理的問題に関する相談7名,家族関係に関する相談5名,異性関係に関する相談5名,職業相談4名,表1 平均値および標準偏差表2 UPIの性別比較(Mann-WhitneyのU検定) 3.学生相談室の利用および精神疾患の有無別のUPIの比較 学生相談室利用の有無別のUPI得点の分析結果を表4に示した.学生相談室を「利用した者」は「利用七なかった者」と比較して,総得点,粗点,S得点,D得点,N得点が有意に高かった(それぞれP=.002,P=.002,P=.004, P =.004, P = .012)。また各項目別では,「親が期待しすぎる」,「自分の過去や家庭は不幸である」,「将来のことを心配しすぎる」,[人に会いたくない],「自分が自分でない感じがする」,「悲観的になる」,「体がほてったり,冷えたりする」,「何となく不安である」,「ものごとに自信がもてない」,「他人にわるくとられやすい」,「つきあいが嫌いである」,「ひけ目を感じる」,「自分のへんな匂いが気になる」,「他人に陰口をいわれる」,「気持ちが傷つけられやすい」の15項目において得点が有意に高く(それぞれP= .014, Pく.0001, P= .001, P<.0001,P=.039, P=.021, P = .006, P=.012, P=.001, P = .015, P=.015, P = .018P=. 043, P= .013, P= .005),「いつも活動的である」の得点が有意に低かった(P =.009) (表4).さらに学生相談室を「利用した者」と「利用しなかった者」の2群におけるUPIの粗点が「20点以上の者」と「20点未満の者」の比率については,「利用した者」で「20点以上の者」の比率が有意に高かった.002)また30点を境にした分析においても,「利用した者」で「30点以上の者」の比率が有意に高かった(P=.001)(表5)。\r\n 「精神疾患のある者」と「それ以外の者」に分けた分析では,「精神疾患のある者」は「それ以外の者」と比較して,D得点および「自分が自分でない感じがする」,「やる気が出てこない」,「悲観的になる」,「周囲の人が気になって困る」の4項目における得点が有意に高かった(それぞれP= .032, Pこ.004, P = .006, P= .034, P=.029)。さらに教育相談4名,その他4名と続いていた。精神疾患に関する相談者9名の疾患別内訳は,統合失調症2名,気分障害2名,パニック障害2名,解離性障害1名,症状性精神障害1名,摂食障害1名であった。\r\n表3 学生相談室利用の有無別の分析(*:χ2検定,**:Fisherの直接法)\r\n表4 学生相談室利用の有無別のUPI比較I(Mann-WhitneyのU検定)\r\n表5 学生相談室利用の有無別のUPI比較II(χ2検定)\r\n表6 精神疾患の有無別のUPI比較(Fisherの直接法)\r\n「精神疾患のある者」と「それ以外の者」の2群におけるUPIの粗点が「20点以上の者」と「20点未満の者」の比率については,有意差を認めなかったが(P= .115), 30点を境にした分析においては,「精神疾患のある者」で「30点以上の者」の比率が有意に高かった(P<.002)(表6)。\r\n 4.学業遂行状況別のUPIの比較\r\n 「4年間で卒業に至らなかった群」と「4年間で卒業に至った群」との間で, UPIの総得点や粗点,S得点,D得点,N得点に有意な差を認めなかった.しかし項目別では,「4年間で卒業に至らなかった群」は「4年間で卒業に至った群」と比較して,「親が期待しすぎる」,「胸が痛んだりしめつけられる」,「死にたくなる」,「何事も生き生きと感じられない」,「体がほてったり,冷えたりする」,「体がだるい」,「よく他人に好かれる」,「自分の変な臭いが気になる」,「他人に相手にされない」の9項目において,得点が有意に高かった(それぞれP=.021, P<.0001, P= .034, P= .020, P=.027, P=.002P =.028, P =.007, P=.012) (表7)。\r\n また,「4年間で卒業に至らなかった群」において,粗点が「20点以上の者」の比率が有意に高く(P=.016)さらに30点を境にした分析においても,「4年間で卒業に至らなかった群」で「30点以上の者」の比率が有意に高かった(P= .013) (表8)。表7「4年間で卒業に至らなかった群」と「4年間で卒業に至った群」のUPI比較I(Mann-WhitneyのU検定)\r\n表8「4年間で卒業に至らなかった群」と「4年間で卒業に至った群」のUPI比較Ⅱ(χ2検定)\r\n表9「4年間で卒業に至った群」と「4年間で卒業に至らなかった群」の比較(*:χ2検定,**:Fisherの直接法)\r\n 5.学業遂行状況と諸要因との関連性の分析\r\n 「4年間で卒業に至らなかった群」は「4年間で卒業に至った群」と比較して,男性の比率が有意に高かった(P=.002)が,学生相談室を「利用した者」と「利用しなかった者」の比率および「精神疾患のある者」と「それ以外の者」の比率には有意な差を認めなかった(それぞれP=.273, P= .387) (表9)。\r\n 6.学生相談室を「利用しなかった者」に関する分析\r\n 学生相談室を「利用しなかった者」に限定した分析において,「4年間で卒業に至らなかった群」は「4年間で卒業に至った群」と比較して,「気分に波がありすぎる」,「胸が痛んだり,しめっけられる」,「死にたくなる」,「体がだるい」,「他人に相手にされない」の5項目の得点が有意に高かった(それぞれP=.033,P=.046,P=.010,P=.003,P .011)。また「4年間で卒業に至らなかった群」は「4年間で卒業に至った群」と比較して, UPIの粗点が「30点以上の者」の比率が有意に高かった。(P=.033)。\r\n 7.「虚偽尺度」に関する分析\r\n UPIの粗点と「虚偽尺度」4項目の合計点の間に,有意な負の相関関係が認められた(r = -0.27, P<0.001)。また粗点が「20点以上の者」と「20点未満の者」の比較では,「20点以上の者」で「虚偽尺度」4項目の合計点が有意に低かった(P<0.001)。同様に,30点を境にした分析においても,「30点以上の者」で「虚偽尺度」4項目の合計点が有意に低かった(P= 0.002)。\r\n\r\nⅣ 考察\r\n 1.UPIの分析\r\n 対象者のUPIの総得点および粗点の平均は,それぞれ17.7点と15.6点であった。大学入学直後に施行されたUPIの平均粗点に関しては, 11.1点1), 11.0点2), 8.6点3), 13.1点5), 9.5点10)などの報告がある。また湊6)は,5大学の女子学生の平均総得点は11.7~16.6点の間に分布していると報告している。本学対象者の総得点および粗点の平均は,これらの報告に比べていずれも高い結果であった。 UPIの結果から推察される対象者の精\r\n神的健康状態は,他大学と比較する限り決して良好とはいえないと結論付けられる。\r\n また平均点が高い上位10項目に関しては,概ね諸氏の報告4・7・8・9)と一致していたが,「なんとなく不安である」,「他人の視線が気になる」の2項目については,諸氏の報告と比べて上位に位置していた。ただし諸氏の報告における検査結果は,入学直後に施行したものに限らないため,上述した2項目の結果に関しては,検査を入学直後に行ったことにより対人不安が強調された可能性が推察される。\r\n 性別の特徴については,女性で「わけもなく便秘や下痢をしやすい」,「くびすじや肩がこる」といった身体不全に関連する得点が高く,男性で「こだわりすぎる」,「くり返し,確かめないと苦しい」,「汚れが気になって困る」といった強迫傾向に関連する得点が高い結果であった。これらの項目における肯定的回答は,精神疾患を有することを直接的に意味するものではない。しかしながら,一般論として身体化障害などを含む身体表現性障害は女性に多く,強迫性障害は若年男性に多い傾向があり,研究結果はこれらの傾向を反映している可能性が推察される。\r\n 2.学生相談室の利用とその目的に関する分析\r\n 女性は男性と比較して,学生相談室の利用率が高い結果であったが,女性において学生相談室の利用に対する抵抗感が少ない傾向も観察されるため,この事実をもって女性は男性と比較して心理的問題をかかえた者が多いと短絡的に結論付けることはできない。また,学生相談室の利用率に学科・コース別で有意差が認められた。ことに人間福祉学科社会福祉専攻で利用率が高い傾向にあったが,これは人間福祉学科に所属する教員が相談員を兼務したことが関連したものと推察される。\r\n 相談者のうち精神疾患を有する者は9名であったが,そのうちの6名は大学入学後の発病であり,いずれも学生相談室から医療機関を紹介することにより治療が開始された。\r\n 3.学生相談室の利用および精神疾患の有無別のUPIの比較\r\n 学生相談室を「利用した者」は「利用しなかった者」と比較して,総得点,粗点,S得点,D得点,N得点が有意に高く,項目別でも15項目の得点が有意に高かった。さらに学生相談室を「利用した者」は, UPIの粗点に関する20点および30点を境にした分析においても,「20点以上の者」および「30点以上の者」の比率が有意に高かった。学生相談室を「利用した者」はUPIの得点が総じて高く,「利用しなかった者」と比較してより多くの心理的問題を有していたことが明らかとなり,概ね利用が妥当であったと結論付けられる。また有意差のあった15項目は,家族関係上の問題,不安感,対人過敏性,劣等感,自己不確実感などのあらわれと解釈され,これらの問題が学生相談室を訪れる動機となったと推察される。\r\n また,「精神疾患のある者」と「それ以外の者」に分けた分析では,「精神疾患のある者」は「それ以外の者」と比較して,D得点および「自分が自分でない感じがする」,「やる気が出てこない」,「悲観的になる」,「周囲の人が気になって困る」の4項目における得点が有意に高く,また「30点以上の者」の比率も有意に高い結果であった。浜田ら3)は大学1年生を対象にした研究において,なんらかの精神疾患と診断された者はその他の学生と比較して,総得点,粗点,S得点,D得点,N得点が高く,またほとんどの質問項目においても,「はい」と回答した者の比率が高かったと報告している。本研究においては,いくつかの項目で有意差を認めたものの,総得点や粗点,S得点,N得点において有意差は無く,浜田らの研究と比較して有意差が検出された項目は少なかった。この点については,本研究では「精神疾患のある者」は9名と少ないため,今後サンプル数を増やして継続研究を行う必要がある。\r\n 4.学業遂行状況別のUPIの比較\r\n 「4年間で卒業に至らなかった群」は「4年間で卒業に至った群」と比較して,結果で示した9項目で有意に得点が高かった。これら9項目における肯定的回答は,親の期待に対する負担感,抑うつ気分,身体不全感,対人過敏性などの表現と解釈され,これらの心性をもつ者はそうでない者と比較して,その後の学業遂行に支障を来たす可能性が高いことが推察される。また「4年間で卒業に至らなかった群」で粗点が高得点である者の比率が高い結果であったが,粗点が高い者では,精神保健上の支援に加えて学業遂行上の支援の必要度も高いことが推察される。\r\n 5.学業遂行状況と諸要因との関連性の分析\r\n 研究結果では,女性において4年間で卒業に至った者の比率が高い結果であったが,前述したように,女性の学生相談室の利用率は男性より高い傾向にあった。これらの事実より,女性では精神保健上の問題をもつことが学業の遂行に影響しないとの解釈が可能な一方で,学生相談室の利用が学業の円滑な遂行をサポートしたとの解釈も成立する。また「4年間で卒業に至った群」と「4年間で卒業に至らなかった群」では,学生相談室の利用率や「精神疾患のある者」の比率に有意差を認めなかった。これらについても同様に,心理的な問題や精神科的問題を持つことが,学業の円滑な遂行の妨げにならないとの解釈が可能な一方で,学生相談室の利用がこれらの問題を持つ者をサポートした可能性が推察される。\r\n 6.学生相談室を「利用しなかった者」に関する分析\r\n 学生相談室を「利用しなかった者」に限定した分析において,「4年間で卒業に至らなかった群」は「4年間で卒業に至った群」と比較して, UPIの6つの質問項目における得点が有意に高く,また「30点以上の者」の比率も有意に高い結果であった。これらのことより,学生相談室の利用が無く,かつ4年間で卒業に至らなかった者は,4年問で卒業に至った者と比較して,より多くの心理的問題を抱えていたことが推察される。これらの者に対し,精神保健上のアプローチを行うことが学業遂行状況を改善したかは不明であるが,これらの者の中には,精神保健上の支援を要する者が存在していた可能性は否定できない。学業遂行に影響する心理的な問題を抱えつつも,自ら積極的な支援要請行動をとらない学生に対し,個別に学生相談室の利用を促すなどの積極的なアプローチを行うことが,今後の大学精神保健活動上の課題と考えられる。\r\n 7.「虚偽尺度」に関する分析\r\n 「虚偽尺度」の解釈については,自己防衛的,拒否的,反抗的態度などの精神的不健康の表現とする考えがある一方で,活動性,積極性,自己の肯定的受け止めなど精神的健康度が高いことのあらわれとする考え方もあり,意見の一致を見ていない5・7・9)。\r\n 本研究に関する限り,「虚偽尺度」の4項目は,精神的健康度が高い者が肯定的回答をする傾向にあり,これら4項目を「虚偽尺度」と解釈することは,必ずしも適切であるとは言えないと結論付けられる。\r\n 8.本研究の意義と問題点\r\n 本研究は, UPI施行当時より計画された,精密な研究デザインに基づくものではないが,全対象者のその後の学生相談室利用状況ならびに学業遂行状況を追跡したコホート研究として,一定の意義を有すると考える。しかしながらいくつかの問題点も有するため,それらを以下に列挙する。\r\n ・UPIの結果を回収できなかった者の中には,入学早期から欠席勝ちであった者など,学業生活への不適応者が多く含まれた可能性があり,調査における応答バイアスの影響が否定できない。\r\n ・学業遂行上の問題の有無を,4年間で卒業に至ったか否かで判断したが,「4年間で卒業に至らなかった群」の中には,少数ではあるが,家庭の経済状況などの不可抗力による退学者や積極的意味をもつ転学者など,学業遂行上の問題を有していない者も含まれた可能性がある。\r\n ・本研究における「精神疾患のある者」とは,あくまでも学生相談室の来室者に限られ,来室しなかった者の中にも様々な精神保健上の問題を有する者が存在していた可能性が否定できない。\r\n\r\nV 結論\r\n 本学人間福祉学部の2002年度入学者231名を対象に実施したUPIの結果と,その後の精神保健上の問題発生ならびに学業遂行状況との関連性を検討した。対象者のUPIの得点は諸氏の報告と比較して高い傾向にあった。またいくつかの項目において統計学的な性差が認められた。\r\n 学生相談室を「利用した者」は「利用しなかった者」と比較して,総得点,粗点,S得点,D得点,N得点および15項目の得点が有意に高く,また粗点が「20点以上の者」と「30点以上の者」の比率も有意に高かった。\r\n 「4年間で卒業に至らなかった群」は「4年間で卒業に至った群」と比較して,9項目の得点が有意に高く,また粗点が「20点以上の者」および「30点以上の者」の比率も有意に高かった。\r\n 「4年間で卒業に至らなかった群」は「4年間で卒業に至った群」と比較して,男性の比率が有意に高かったが,学生相談室を「利用した者」と「利用しなかった者」の比率および「精神疾患のある者」と「それ以外の者」の比率には有意な差を認めなかった。\r\n 学生相談室を「利用しなかった者」に限定した分析において,「4年間で卒業に至らなかった群」は「4年間で卒業に至った群」と比較して6項目における得点が有意に高く,また「30点以上の者」の比率も有意に高かった。\r\n 精神保健上の問題で学生相談室を利用した者および学業遂行上の問題を有した者は,総じて入学直後のUPIの得点が高い傾向にあり, UPIのスクリーニングテストとしての一定の有用性が確認された。また女性は男性と比較して,学生相談室の利用率が高い反面,4年間で卒業に至った比率も高く,学生相談室を利用することと学業遂行上に問題が生じることは関連しない結果であった。精神保健上の問題をもつことは学業遂行に直接影響し附表 UPI(大学精神健康調査)ないとの解釈が可能な一方で,学生相談室の利用が学業の円滑な遂行をサポートした可能性が推察された。また学業遂行上の問題があるにもかかわらず学生相談室を利用しなかった者の中には,精神保健上のサポートが必要であった者が存在していた可能性があり,これらの者に対するアプローチが今後の大学精神保健の課題として考察された。\r\n\r\n\r\n謝辞\r\n UPIの実施にご協力いただいた, 2002年度「基礎演習」ご担当の先生方に深く感謝いたします。\r\n\r\n引用文献\r\n1)濱田庸子,鹿取淳子,荒木乳根子,他:大学生精神衛生スクリーニング用チェックリスト\r\n (UPI)から見た女子大学生の特徴.聖徳大学研究紀要, 22 (II) ; 125-133, 1991\r\n2)濱田庸子,鹿取淳子,荒木乳根子,他:大学生精神衛生用チェックリスト(UPI)の健康診断\r\n への利用.聖徳大学研究紀要, 25 (II) ; 133-140, 1992\r\n3)濱田庸子,鹿取淳子,荒木乳根子,他:精神保健上のケアが必要だった学生の大学生精神衛生\r\n 用チェックリスト(UPI)の特徴.聖徳大学研究紀要, 27 (II) ; 85-91, 1994\r\n4)石川雅健:UPI(精神健康調査)からみた現代女子短大生のパーソナリティー.東海女子大学\r\n 紀要,22 ; 75-79, 2002\r\n5)小柳晴生:UPIによる心身の健康と経験との関係について.金沢大学臨床心理学研究室紀要,\r\n 6 ; 31-38, 1987\r\n6)湊博昭:UPIにみる女子学生の変化について.第4回大学精神衛生報告書, 47-52, 1982\r\n7)中藤淳:愛知県立大学における精神保健の現状と課題(2)一健康調査カード(UPI)による新入\r\n 生のデーター.愛知県立大学文学部論集,53 ; 129-148, 2005\r\n8)西野明,土屋裕睦:UPIにおける回答方式変更の影響.大阪体育大学紀要,31 ; 39-45, 2000\r\n9)大江米次郎,益田三三子,勝山信房:UPIを中心にみた本学学生の精神的不健康に関する考\r\n 察.夙川学院短期大学研究紀要,9 ; 101-110, 1984\r\n10)吉武光世:UPIの有用性について.東洋女子短期大学紀要,28 ; 87-103, 1996\r\n"}]}, "item_creator": {"attribute_name": "著者", "attribute_type": "creator", "attribute_value_mlt": [{"creatorNames": [{"creatorName": "中川, 正俊"}], "nameIdentifiers": [{"nameIdentifier": "170", "nameIdentifierScheme": "WEKO"}]}, {"creatorNames": [{"creatorName": "荒木, 乳根子"}], "nameIdentifiers": [{"nameIdentifier": "171", "nameIdentifierScheme": "WEKO"}]}, {"creatorNames": [{"creatorName": "平, 啓子"}], "nameIdentifiers": [{"nameIdentifier": "172", "nameIdentifierScheme": "WEKO"}]}]}, "item_files": {"attribute_name": "ファイル情報", "attribute_type": "file", "attribute_value_mlt": [{"accessrole": "open_date", "date": [{"dateType": "Available", "dateValue": 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UPI(大学精神健康調査)とその後の心理的問題の発生および学業遂行との関連性に関する研究
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名前 / ファイル | ライセンス | アクション |
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本文(PDF) (1.1 MB)
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Item type | 紀要論文 / Departmental Bulletin Paper(1) | |||||
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公開日 | 2013-01-21 | |||||
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タイトル | UPI(大学精神健康調査)とその後の心理的問題の発生および学業遂行との関連性に関する研究 | |||||
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言語 | en | |||||
タイトル | Research on relation between UPI and occurrence of psychological problem, and relation between UPI and study accomplishment | |||||
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言語 | jpn | |||||
キーワード | ||||||
主題Scheme | Other | |||||
主題 | UPI | |||||
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主題Scheme | Other | |||||
主題 | 大学精神保健 | |||||
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主題 | 学業遂行 | |||||
資源タイプ | ||||||
資源タイプ識別子 | http://purl.org/coar/resource_type/c_6501 | |||||
資源タイプ | departmental bulletin paper | |||||
著者 |
中川, 正俊
× 中川, 正俊× 荒木, 乳根子× 平, 啓子 |
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著者別名 | ||||||
識別子Scheme | WEKO | |||||
識別子 | 173 | |||||
姓名 | Nakagawa, Masatoshi | |||||
著者別名 | ||||||
識別子Scheme | WEKO | |||||
識別子 | 15 | |||||
姓名 | Araki, Chineko | |||||
著者別名 | ||||||
識別子Scheme | WEKO | |||||
識別子 | 16 | |||||
姓名 | Hira, Keiko | |||||
抄録 | ||||||
内容記述タイプ | Abstract | |||||
内容記述 | 大学生の年代は多様な精神保健上の問題が発生するため,一次および2次予防を中心とした大学精神保健対策は,学業の円滑な遂行を支援する上でも重要な課題となっている。そのためには,精神保健上の問題を有するか,または将来発生する可能性が高い学生を早期に把握し,精神保健の専門的サポートを行うことが重要である。またその際に,サポートの対象となる学生を的確に把握する方法として,高い感度と特異度を有するスクリーニング基準の確立が求められている。本論では,本学人間福祉学部への2002年度入学者231名を対象に実施したUPI(大学精神健康調査)の結果と,その後の精神保健上の問題発生ならびに学業遂行状況との関連性を検討した。その結果,心理的問題で学生相談室を利用した者や精神疾患を持つ者は,そうでない者と比較してUPIの得点が高く,また学業の遂行に問題があった者も,そうでない者と比較してUPIの得点が高い傾向が明らかとなった。 | |||||
書誌情報 |
田園調布学園大学紀要 en : Bulletin of Den-En Chofu University 巻 1, p. 51-67, 発行日 2007-03-17 |