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はじめに\r\n従来よりわが国では,障害種別(身体・知的・精神障害)ごとに異なる法律に基づいて,福祉サービスや公費負担医療が提供されてきた。 2006年4月より全面的に施行された障害者自立支援法は,このような縦割り制度を修正し,障害の種別や年齢に関わりなく,共通のしくみのなかでサービスを提供するとしている。すなわち,同法は,対象の障害特性の相違,制度の歴史的な展開の相違,行政の分断を克服し,サービス提供のあり方を再編することを明らかにしている。\r\n 障害者自立支援法では,サービス利用者が介護給付費を受給するにあたり,まず,障害程度区分による1次判定が必要となる。そして市町村審査会による2次判定を経て,利用者のサービス支給量が決定する。\r\n ところが,当該の不備を補い整備されたはずの障害者自立支援法においても,未だ当事者の生活上の支援ニーズを的確に把握し,それに相当するサービスを提供することができないでいる。その大きな阻害要因となっているのが現行の障害程度区分である。\r\n この1次判定に用いられる障害程度区分の調査項目とは,およそ抽象化された機能障害(impairment)に起因する能力障害(disability)の有無を列挙したものであって,利用者が生活する環境や,本人の意思決定を反映するものにはなりえていないのである・ このような調査結果の統計的処理によって福祉的な支援ニーズの客観性を担保しようとする方式に対して,批判的なまなざしを向ける研究者もいる。すなわち,欧米では,医学モデルから出発しつつも,次第に生活モデル・社会モデルへと転換していった。そして,ソーシャルワーカーや専門職チームが個別的な評価をし,さらには,障害当事者もまた意見を表明するプロセスへと発展してきた。\r\n だが,一方のわが国では,依然として,福祉ニーズを個別に評価する技術と専門職を育てることができずにいる。それに加えて,このような評価尺度による障害程度区分認定が定着してしまうかのような事態が生じてきている。これでは将来的に,「専門職による個別評価システム」へと転換してゆく素地をつくることなどできないだろう,と手厳しい批判を浴びせているのである。\r\n 障害者自立支援法は,障害種別による縦割りを廃止するとしながらも,身体障害者,知的障害者,精神障害者,障害児の範囲については,従来と同じ範囲にすることにしている。このため,障害者の定義については,それぞれ,身体障害者福祉法などの個別法を根拠にした定義によって障害種別による分類が依然として行われている。\r\n たとえば,身体障害者制度の対象になるためには,身体障害者福祉法の取り決めに従って,身体障害者手帳を取得しなければならない。身体障害者という理念型が先にあって,それに該当するものだけが身体障害者として認められ,相応のサービスを受給する資格を得ることができるのである。\r\n わが国の障害者福祉の対象は,機能障害に基づいており,「生活上の困難」といった,生活上の支援ニーズを中心に考えられてこなかった。その負の遺産がいまなお生きながらえていることを強く指摘しておかねばならない。\r\n 何らかの障害のある当事者が,生活上のニーズに応じた相当のサービスを受けることができる社会を実現すること。それがわれわれの目標とすべきものである。\r\n 評価尺度が支援ニーズを生み出すのではない。ましてや,サービスを利用する利用者にとって,当該の評価尺度が適切な支援ニーズの把握を阻害するというのであれば,現行の障害者自立支援法における障害程度区分は,周到な議論を重ねたうえで全面的に改定されなければならない。なまなましい個別具体的な当事者の実態を把握し,ニーズを探り当て,質・量ともに妥当なサービスを提供し,適切な支援へと繋いでゆく。それを可能にする個別評価システムが,いまこそ求められている。\r\n 小論では,こうしたいわば支援ニーズを勘案できない障害者自立支援法の制定に先立って,わが国の障害者福祉のあり方を規定してきた障害種別施策の成立過程について確認と整理をしながら,若干の考察を試みる。平成21年度に行なわれる障害者自立支援法の改正は,何よりもまず当事者の支援ニーズが先行するものにしなければならない。\r\nⅡ 身体障害者福祉法成立の経緯\r\n わが国の障害者福祉制度の歴史は,戦前の救貧制度である恤救規則から, 2005年の障害者自立支援法まで,それぞれ6つの段階に分類することができる。\r\n 6つの段階とは,①(障害者対策と)貧困対策との未分化期,②貧困対策と障害者対策との分離期,③障害種別対策の確立期,④施設設置促進政策期(施設化政策期),⑤地域福祉政策推進期,⑥障害者福祉の根本的な改革期,である。\r\n 本節で考察する「身体障害者福祉法」は,小澤の分類によると,②貧困対策と障害者対策との分離期,に該当する。\r\n 第2次大戦敗戦後,わが国は,敗戦による国家財政の破綻とインフレーションの激化,国民生活の貧困化等の社会問題が噴出してきた。加えて戦地からの大量引揚者,戦争によって傷を負った傷痍軍人,そして,戦地には赴いていない一般国民の戦傷者の増大もまた解決を求める喫緊の課題として発生してきた。このような社会問題にたいする緊急措置として,貧困問題に対しては,生活困窮者緊急生活援助要綱,(旧)生活保護法が制定された(ともに1946年)。\r\n 一方,障害者対策には, 1947年に身体障害者の収容授産施設が設置されるとともに翌年には視覚障害者向けの国立施設,国立光明寮が誕生した。\r\n 敗戦直後の時期には,障害者を収容保護する対策が中心であったが,質・量ともに対応が困難を極めるようになってきたのである。\r\n 1946年に日本国憲法が公布され,基本的人権の考え方が明文化されると,戦前の傷痍軍人にたいしてのみ提供されてきた国家保障が広く国民一般にも適用されることが便宜的には(傍点,筆者)認められた。よって,「一般障害者への福祉施策は国家による公的な責任によってなされる」という原則がはじめて示されたことで,障害者福祉に関する立法の制度化が加速することになる。\r\n 身体障害者福祉法は,1)敗戦後の混乱期に救貧対策が社会問題として独立した問題群として認識されたこと,そして, 2) GHQの方針により軍事行政が解体され,日本国憲法の公布とともに,いわゆる一般の障害者がその範疇に正式に組み込まれたことによって成立したのである。\r\n だが,わが国で初めて制定された障害者福祉法である身体障害者福祉法は,もとより縦割りを理想としていたわけではなかった。\r\n すなわち,「この法の根本的な主旨から云えば,あらゆる原因によるあらゆる種類を有する者を対象とし,その障害の存する限り,積極的にその更生を図ることは,単に感覚器障害や運動器障害の盲,ろう唖,肢体不自由ばかりでなく,精神病,精神薄弱,精神々経症,癩,結核,心臓病,腎臓病,中風,脚気等その疾病が何であれ,その障害を現に存するものをこの法の対象とすべきことが極力主張されたのである」。\r\n身体障害者福祉法の策定過程においては,外部障害者ばかりでなく,内部障害者も精神薄弱者も精神病者も,障害者すべてを対象とする総合的な障害者福祉法を制定すべく作業が行なわれていた(傍点,筆者)。しかし,最終的には,1)財政的事情,2)画一的判定の容易さ,3)更生への援助効果の挙げやすさ,4)諸外国にならって狭い対象から出発するのが無難,等の理由から,視力・聴力・言語障害および肢体不自由に限定したものとして出発したのだった。\r\nⅢ 精神薄弱者福祉法成立過程における「独立自活」規定と救護施設の役割\r\n 戦前に設立された精神薄弱児施設は,そのほとんどが民間施設であることから,いずれも施設自体としての法的根拠は存在しなかった。したがって,施設を利用している者以外の大多数の精神薄弱児は,在宅のまま放置されていた。 1947年の児童福祉法制定は, 「児童の権利」の承認,児童の養育に対する公的責任の承認を念頭におき,その対象を「すべての児童」へと一般化したことから,本法の制定によって,精神薄弱児ゆえに福祉的な保護を欠いている児童は,精神薄弱児施設に保護・収容されることになり,この施設が児童福祉施設として公認されるに至った。\r\n 児童福祉法は,心身障害児の福祉について国家責任を明らかにするとともに,それを積極的に保障しようとしたという意味において意義あるものではあった。\r\n しかしながら,この法律の適用範囲が満18歳(特例として20歳)であることから,必然的に年齢超過者をどうするかという問題に突き当たった。\r\n また,精神薄弱児施設の主たる目的は,「独立自活に必要な知識技能を与える」ことであったが,児童福祉法が規定する年齢を超過しても容易に独立自活できない者はいったいどうするのか,という問題も生まれてきた。\r\n この問題にたいして,辻村泰男は,「さし当っては18歳以上の精薄保護は成人として,社会局の所轄事務の中に解決策をもとめるはかなかろう。具体的には,生活保護法の保護施設による成人精薄者保護の途を拓かなければならない,と考えるに至った」と述べている。だが,そのような見解にたいして,日本精神薄弱者愛護協会(以下,愛護協会)が異議を唱えた。愛護協会は,彼らの取り組みについて,以下のように述べる。\r\n 戦前の施設はもちろん法的根拠もなく運営されていたので,児童・成人の別なく入所していたが,児童福祉法の制定により,成人の精神薄弱者の問題が当初から積み残しとなっていた。愛護協会では24年の再建直後から,児童福祉法の対象外となる18歳以上の精神薄弱者の取り扱いについて,入所者の年齢制限の撤廃を全国社会事業大会で提案したり,厚生省と話し合いをもったりした。\r\n 昭和33 (1958)年4月,埼玉県秩父の長瀞で開かれた関東地区施設長会議の席上で,厚生省側から,精神薄弱児施設の年齢延長か,精神薄弱者の施設を作るための単独法制定かの2点について愛護協会としての考え方を問われ,これを受けて,愛護協会は,次のような結論を出すに至った。\r\n すなわち,1)年齢延長が数年伸ばされても,本質的な問題解決にはつながらない。2)生活保護法(救護施設)では精神薄弱者は救われない。児童福祉法の精神で一貫した保護が必要(傍点,筆者)というものであった。ここで注目すべきは,2)の「生活保護法(救護施設)では救われない」,「児童福祉法の精神で一貫した保護が必要」というくだりである。\r\n 児童福祉法の精神とは,前述した「独立自活」という理念である。精神薄弱者福祉法制定17を急ぐ愛護協会は,独立自活の精神に基づいていない(とされる)救護施設と精神薄弱児施設との非連続を強調する一方で,精神薄弱児と精神薄弱者を一貫(連続)した理念(独立自活)のもとで,彼らに必要な知識・技能を与えるべきであると強く主張したのである。\r\n さらに,愛護協会は,機関紙『愛護』に,「大人の施設というところ」というコラムを掲載し,「18歳になって連れて行かれる救護施設とは,陰湿で,身心の障害者が沢山入つでいたが重症者が多くて年に十数名の死亡者が出る。それだけならいゝ,が,その棺桶の未だおいてある部屋に子供が入ることもあるJ18という当該の障害児やその親が危惧を抱くような記事を掲載した。この記事によって,親亡き後のわが子の将来に不安を募らせている障害児の家族の理解を得ることに成功した。それまでは,成人した知的障害者はもとより,貧困層を含む「広義の障害者」全般の受け且となっていたのは救護施設であった。だが,救護施設に精神薄弱児者を追いやることは,独立自活の連続性を損なうと愛護協会は強く主張した。そしてそれを論拠としながら,児童福祉法との連続性を強調することで彼らの生活保護法下での処遇を拒否したのだった。\r\n\r\n そして,昭和34年から精神薄弱関係三団体の一員として育成会,全特連とともに行政や報道関係者にたいして法の制定を急ぐように働きかけた。そのことが功を奏して,翌,昭和35 (1960)年,精神薄弱者福祉法が成立するのである。\r\n\r\n 精神薄弱者福祉法は,年齢超過した精神薄弱者(知的障害者),すなわち,戦後児童福祉法の成立によってはじかれた者たちを施設において保護する根拠法となり,その役割を果たすことになる。昭和9 (1934)年に石井亮一を初代会長として設立した愛護協会は,滝乃川学園,白川学園,桃花塾,藤倉学園,筑波学園,八幡学園,小金井治療教育所,浅草寺カルナ学園の8施設によって出発した。\r\n もとより,精神薄弱児の施設における保護・教育を目指すべく設立した愛護協会にとって,児童福祉法の成立は,それが当該施設の法的根拠となる一方で,年齢を超過した者をどのように処遇するのか,という新たな問題に直面することを意味した。\r\n 戦時中,中断していた同協会の活動は,終戦後の昭和24(1949)年より再開され,名称も子どもだけの問題ではないと認識から,「精神薄弱者愛護協会」(傍点,筆者)となった。万一,精神薄弱者が救護施設へと流出してしまえば,当核施設およびその施設を集約する愛護協会の在立基盤を揺るがすことにもなりかねない。\r\n したがって,施設(での援助活動を含めて)を維持・継続および発展させてゆくためには精神薄弱福祉法の成立は必須条件だった。愛護協会内部で様々な議論があれども,おおむね,以上のような見解は否定せざるものとしてあったのである。\r\nⅣ 総合福祉法としての「障害者福祉法」の提起\r\n ここで,近年の動向として,総合的な障害者支援を可能にすることを目的とした総合的な障害者福祉法が試案として提起されてきていることを振り返っておきたいと思う。\r\n 日本障害者協議会(以下, JD)は, 1995年,「障害者福祉法制定特別委員会」(委員長・佐藤久夫)を設置した。そして,20名あまりの委員による委員会における検討を経て,「障害者福祉法への試案」を作成し, 1996年に正式にJ提案とした。\r\n その具体的な内容は,身体障害者福祉法,知的障害者福祉法および精神保健福祉法(の福祉部分)を統合するものである。当該の委員会で委員長を務めた佐藤久夫は,法が統合されることの重要性を,以下の3つの点から論じている。すなわち, 1)近年では,障害者の「自立と社会参加」を促進するという共通の目標が掲げられ,それを実現するための手段として,機能障害の治療や訓練だけでなく,サポート(ささえ)や環境改善が重要視されてきている。したがって,そこでは参加制約をどうなくすかという共通するニーズにどのように対応するか,が問題となることから,共通して必要とされるサービス(相談員や制度など)や,共同して利用できるサービス(ホームヘルプや障害者福祉センターなど)の重要性が増してきている。そのような動向を受けて,今日では,総合的な障害者福祉法のなかで,必要に応じて障害種別のサービスを設けるほうが効果的である。\r\n 2)サービスの提供主体が地方自治体へと移行してきていることから,大規模な専門的施設ではなく,住み慣れた地域で暮らしながら,必要に応じてサービスを自宅で受けることのできる,小規模で総合的な施設・機関・事業を展開することの必要性が生じてきていること。\r\n 3)従来の障害種別法では,専門化・特殊化に眼目があり,普遍化と拡大の要求に応じにくいことから,高次脳機能障害,遷延性意識障害,慢性身体疾患(難病など),学習障害,自閉症,てんかんなど,多様な障害像に対応できるような,柔軟な法制度が求められていること。以上の3点がその主要な論点であって,この3点は相互に連関しているのだと佐藤は指摘する。\r\n 機能障害種別の法体制は,対象もアプローチも,文字どおり機能障害種別ごとに分けられる。当然,サービス内容は当該の機能障害の治療と回復訓練となる。だが,佐藤は,このような機能障害の治療と医学リハのような機能回復訓練を必ずしも否定するわけではないことに留意されたい。\r\n そうではなくて,その議論のポイントは,あくまでも何らかの支援ニーズを抱える当事者自身が地域で暮らしながら,必要に応じてサービスを利用してゆく。そして,様々な参加制約を取り除き,状況を改善することで,彼(彼女)が社会参加する可能性を開いてゆく。そのような柔軟な仕組み(制度)が必要である,と解することができる。\r\nV おわりに\r\n 1949年の身体障害者福祉法, 1960年の精神薄弱者福祉法制定によって障害種別施策が確立し,この2法が成立したことで,他国に例を見ない機能障害別の縦割り制度が誕生した。本小論では,身体障害者福祉法がその制定過程において,いわゆる「総合法」的な議論がなされたにもかかわらず,結果としてそれが実現されなかったことを指摘した。\r\n また,精神薄弱者福祉法の制定過程では,日本精神薄弱者愛護協会が,児童福祉法の唱える「独立自活」規定と連続(一貫)した保護が必要であることを訴えることによって,各々の機能障害に拘ることなく,あらゆる障害者を対象としてきた救護施設を周到に排除することで成立したことを指摘した。それは精神薄弱児を施設で保護・教育することをその旨とする愛護協会においては,各々の施設とそれを集約する愛護協会の存続を賭けたいわば戦いであった。その結果,(成人)施設の法的根拠となる精神薄弱者福祉法が満を持して成立することになる。だが,皮肉なことに,同法の成立によって,身体障害者福祉法と精神薄弱者福祉法という二法が並び立ち,機能障害による分離が明確となり,縦割りの障害種別施策がわが国においていよいよ確率してゆくことになる。障害種別施策の確立の過程においては,こうした総合的な障害者福祉法への接近と後退が看取された。\r\n このような「機能障害の種類と年齢による対象区分」が先立つわが国の障害者福祉のあり方に対して,日本障害者協議会(JD)が, 1996年に総合福祉法としての障害者福祉法を試案として提起したが,現行の障害者自立支援法は,そのような試案を必ずしもすべて反映するものにはなりえていない。\r\n 平成21年度には,障害者自立支援法の改正が行なわれる。当該の法改正においては,制度が支援を阻む事態を回避しなければならない。再び繰り返すが,それは,何よりもまず障害のある当事者の支援ニーズを反映し,個々にとって最も適当なサービスが提供される,そのようなものにしなければならないのである。\r\n参考文献\r\n1)佐藤久夫・小澤温『障害者福祉の世界 第3版』有斐閣 2006年\r\n2)佐藤久夫「わが国の障害者の権利保障と総合福祉法」『障害者問題研究』第31巻第4号 2004年\r\n3)佐藤久夫「障害程度区分の内容と策定過程に関する検討」『日本社会事業大学研究紀要』53 2006年\r\n4)小澤温編『よくわかる障害者福祉 第3版』ミネルヴア書房 2007年\r\n5)瀧澤仁唱「障害概念と福祉サービス対象認定亅『障害者問題研究』26-1 全国障害者問題研究会 1998年\r\n6)日本障害者協議会(JD)政策委員会繽・障害の定義認定ワーキンググループ報告書『「谷間の障害」を生み出す医療モデル(疾患・機能障害主義)を終了し,支援ニーズに基づく障害者施策の確立を』日本障害者協議会 2005年\r\n7)津曲裕次「精神薄弱者福祉の成立―精神薄弱者福祉法の成立まで」吉田久一編著『戦後社会福祉の展開』ドメス出版 1976年\r\n8)辻村泰男「精神薄弱児施設における『独立自活』論争の経過一戦後精薄問題史の一断面」『精神薄弱者問題史研究』1 精神薄弱者問題史研究会 1964年\r\n9)一番ケ瀬康子他『救護施設 最底辺の福祉施設からのレポート』ミネルヴア書房 1988年\r\n10)『月刊福祉 精神薄弱者福祉法制定30年』全国社会福祉協議会 1990年\r\n11)国立コロニーのぞみの園・田中資料センター編『わが国精神薄弱者施設体系の形成過程』心身障害者福祉協会 1982年\r\n12)『日本愛護五十年の歩み』日本精神薄弱者愛護協会 1988年\r\n13)栗田広,渡辺勧持共訳『知的障害 定義,分類及び支援体系 第10版AAMR 米国精神遅滞協会』日本知的障害者福祉連盟 2004年\r\n14)厚生省社会局更生課編『精神薄弱者福祉法 逐条解釈と運用』1960年\r\n15)障害者福祉研究会編『逐次解説 障害者自立支援法』中央法規 2007年\r\n16)皆川正治「精神薄弱者福祉法制定当時の背景とその後の展開」『月間福祉』11月号全国社会福祉協議会 1990年\r\n"}]}, "item_creator": {"attribute_name": "著者", "attribute_type": "creator", "attribute_value_mlt": [{"creatorNames": [{"creatorName": "冨永, 健太郎"}], "nameIdentifiers": [{"nameIdentifier": "225", "nameIdentifierScheme": "WEKO"}]}]}, "item_files": {"attribute_name": "ファイル情報", "attribute_type": "file", "attribute_value_mlt": [{"accessrole": 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総合的な障害者支援への接近と後退 : 支援ニーズが先行する改正障害者自立支援法の制定に向けて
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名前 / ファイル | ライセンス | アクション |
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Item type | 紀要論文 / Departmental Bulletin Paper(1) | |||||
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公開日 | 2013-01-21 | |||||
タイトル | ||||||
タイトル | 総合的な障害者支援への接近と後退 : 支援ニーズが先行する改正障害者自立支援法の制定に向けて | |||||
タイトル | ||||||
言語 | en | |||||
タイトル | An Approach and Goingback to the Integrated Support to Persons with Disabilities | |||||
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主題 | 障害者自立支援法 | |||||
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資源タイプ識別子 | http://purl.org/coar/resource_type/c_6501 | |||||
資源タイプ | departmental bulletin paper | |||||
著者 |
冨永, 健太郎
× 冨永, 健太郎 |
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著者別名 | ||||||
識別子Scheme | WEKO | |||||
識別子 | 226 | |||||
姓名 | Tominaga, Kentaro | |||||
抄録 | ||||||
内容記述タイプ | Abstract | |||||
内容記述 | 1949年の身体障害者福祉法では,その制定過程において,いわゆる「総合法」的な議論がなされたが,結果としてそれは実現しなかった。また,1960年の精神薄弱者福祉法は,児童福祉法の唱える「独立自活」規定との連続性を(形式的にであったとしても)担保するという考えのもとで,機能障害によって保護・収容するのではなく,あらゆる「広義の障害者」を対象としてきた救護施設を周到に排除することで成立した。わが国では,この身体障害者福祉法と,精神薄弱者福祉法の制定によって,障害種別施策が確立する。この2法が成立したことで,他国に例を見ない機能障害別の縦割り制度が誕生したのである。こうした「機能障害の種類と年齢による対象区分」が先立つわが国の障害者福祉のあり方に対して,日本障害者協議会(JD)は,1996年に総合福祉法としての障害者福祉法を試案として提起している。だが,現行の障害者自立支援法では,そのような試案を必ずしも反映するものにはなりえていない。平成21年度には障害者自立支援法の改正が行なわれる。当該の法改正においては,制度が支援を阻む事態を回避しなければならない。それは,何よりもまず,障害のある当事者の支援ニーズが先行するものでなければならない。 | |||||
書誌情報 |
田園調布学園大学紀要 en : Bulletin of Den-En Chofu University 巻 2, p. 195-204, 発行日 2007 |