WEKO3
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"本調査は,本学実習先を主とした神奈川県・東京都内の保育所・幼稚園計161園を対象とした男性保育者に関する意識調査の報告である。本学に入学した学生の4割は男子学生であり,養成校として,男性保育者の養成にむけて,(1)男性保育者の勤務状況の実態,(2)保育現場で認識されている男性保育者の特徴,(3)幼稚園と保育所における男性保育者に対する認識の差,(4)男性保育者雇用の有無別の男性保育者に対する認識の差,の4点を検討することを目的とした。結果より,まず男性保育者は40%の園で雇用されており,幼稚園ではフリー・体育講師を担当する者が多く,また保育所では乳児保育は担当していないことが示された。また男性保育者の特徴については,保育所・幼稚園で認識に差が認められ,性別役割分業意識は,幼稚園の方が保育所よりも強いということが示唆された。また男性保育者を雇用している園の方が,男性保育者が子どもや保護者と良い人間関係を形成していると認識していることが伺えた。今回の調査で得られた結果を男性保育者の養成に活かしていきたいと考えている。", "subitem_description_type": "Abstract"}]}, "item_10002_full_name_26": {"attribute_name": "著者別名", "attribute_value_mlt": [{"nameIdentifiers": [{"nameIdentifier": "196", "nameIdentifierScheme": "WEKO"}], "names": [{"name": "Honda, Junko"}]}, {"nameIdentifiers": [{"nameIdentifier": "41", "nameIdentifierScheme": "WEKO"}], "names": [{"name": "Kobayashi, Ikuko"}]}, {"nameIdentifiers": [{"nameIdentifier": "27", "nameIdentifierScheme": "WEKO"}], "names": [{"name": "Sakurai, Toyoko"}]}, {"nameIdentifiers": [{"nameIdentifier": "31", 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本学子ども家庭福祉学科も,男女両性による保育を積極的に推進することを視野に入れて開設された。現在,入学者の約4割が男子学生であり,予想以上に男子高校生の保育志望者が多い現状である。入学前の保育体験を調査したところ,小,中,高校での授業の一環(中学・高校の家庭科や総合学習の授業)として保育に関わったものは, 128名中,87名(68%)であり,そのうちさらに興味を持って自主的なボランティア活動を続けたものは35名(27%)であった。また学校での体験がなく,保育ボランティアを自己開拓した者は18名(14%)である。新エンゼルプラン発表後,少子化対策の一環として,平成14年度より中学校,高等学校で子どもの発達や家庭などに関する内容を学習するように学習指導要領が改訂されている。さらに,幼児とふれあう体験学習の推進も示唆されている。次世代育成にとって子どもの理解をすすめる体験学習は重要であり,結果として,男子学生の保育志望者は今後も一層増大すると思われる。\r\n このように徐々に男性の保育者志望は増え,保育に対する関心は年々高まる一方で,保育者全体に占める男性の割合は微増傾向にあるものの,依然として女性が大多数を占めている。男性保育者の総数については,厚生省の1994年に行った調査によれば,全国の公立および私立認可保育所の専任保育者数は21,537名であり,そのうち男性は1,085名,全体にしめる割合は0.5%であった。専任保育者の多数は女性であることがわかる。また6年後,平成12年(2000年)の国勢調査によると,保育士は全体の361,488名中4,666名であり1.3%,幼稚園教諭は全体の96,845名中5,937名であり6.1%であることが示されている。9割以上は女性であるという現状は依然として変わりはない。\r\n それでは,年々増加する男性の保育志望者の受け皿として,保育現場は男性保育者の雇用についてどう考えているのであろうか。これまでの男性保育者に関する先行研究は,男性保育士を対象にした調査研究(中田, 2000),女性保育士を対象にした調査研究(斉藤,2002),保護者を対象にした調査研究(鈴木・斉藤・木下, 2000),保育士養成校の学生を対象にした調査研究(今泉, 2003),女性保育者・保護者・学生を比較検討した研究(菊地, 2002)などがある。しかしながら,男性保育者を採用する保育所・幼稚園を対象にした研究はそれほどなされていない。また保育現場を対象とした調査でも,これまでは保育所を中心とした研究であり(中田・前迫・智原・石田・高岡・福田, 2004;竹澤, 1999),幼稚園・保育所における比較検討は行われてこなかった。\r\n そこで本研究では,本学周辺の神奈川県・東京都の保育現場の男性保育者の受け入れ現状を把握し,男性保育者の養成に関して具体的な手がかりを得るとともに,幼保一元化の動きを視野に入れ,これからの保育者養成について次の4点を中心に検討する。\r\n1.神奈川県・東京都の男性保育者の雇用の有無と勤務状況について\r\n2.保育現場の認識している男性保育者の特徴\r\n3. 保育所・幼稚園における男性保育者に対する認識の差の検討\r\n4. 男性保育者雇用の有無別の男性保育者に対する認識の差の検討\r\n\r\n方法\r\n1.調査対象:神奈川県内及び東京都内の主として本学の保育実習,教育実習の内諾を得ている保育所(116ヶ所),幼稚園(158ヵ所)計274園を対象とした。 161園(保育所69所・幼稚園92園)から回答が得られ,回収率は58.8%であった。\r\n2.調査内容:調査項目は,以下の内容によって構成された。\r\n1)男性保育者の勤務状況に関する5項目(園の種別,園の設置・運営主体,園児数, 保育者数(常勤・非常勤),男性保育者の有無)\r\n2)男性保育者の特徴に関する32項目(「とてもそう思う」,「ややそう思う」,「どちら ともいえない」,「あまりそう思わない」,「全くそう思わない」の5段階評定)。\r\n3)男性保育者雇用の有無別に回答する項目\r\n①雇用している園(4項目,自由記述2項目:常勤の男性保育者数,常勤男性保育者の職務分担,非常勤の男性保育者数,非常勤男性保育者の職務分担,男性保育者に求められる資質(自由記述),男性保育者に関する意見(自由記述))\r\n②雇用していない園(4項目,自由記述1項目:男性職員の有無とその職種,男性保 育者採用の意思の有無,採用意思がある場合の男性保育者に希望する条件,採用意思がない場合の理由,男性保育者に関する意見(自由記述))\r\n 3.手続き:保育所・幼稚園に調査票を郵送し,園長,理事長,主任保育者のいずれか\r\nに回答を依頼した。調査票の回収は,郵便で返送してもらうという方法を採った。調査期間は2006年5月12日から6月5日であった。\r\n\r\n結果と考察\r\n 1.男性保育者の雇用の有無と勤務状況について\r\n 男性保育者の勤務状況を把握するために,保育所・幼稚園別に男性保育者の採用率について検討したところ,保育所では40.5%,幼稚園では39.1%の園において男性保育者を雇用していた。一見すると,保育所と幼稚園による受け入れ状況に差はみられない。しかしながら,設置・運営主体別に比較すると(図1参照),保育所では男性保育者を雇用している園が,公立22%,社会福祉法人89%となっており,民間園のみで比較した場合,幼稚園に比べ保育所の採用率が非常に高いことが示された。公立園で男性保育者の採用が少ない点については,公立園の保育者の勤続年数の長さから,男性保育者が養成・雇用され始めた時期以降に採用された若年層が民間園に比較して少ないことが予想される。社会福祉施設等調査報告(2001)においても,10年前と比べて,女性は若年層の占める割合が変化していないのに対して,男性においては,若年層の占める割合が高くなり,男性全体の70%が,29歳以下であることが報告されている。今後,世代別の男女比や保育者の平均勤続年数なども合わせて精査していく必要があると考えられる。\r\n図1 設置運営主体別の男性保育者を雇用している園の割合\r\n つぎに園児数別に男性保育者を雇用している保育所・幼稚園の割合を図2に示した。小規模園(保育所60名以下/幼稚園100名以下),大規模園(保育所151名以上/幼稚園301名以上)では,男性保育者のいる園がいない園を上回っていた。一方中規模園では男性保育者のいる園は半数以下であった。保育所においては設置運営自体が関係しており,中規模園は8割が公立園であり,そのため雇用率が低いと考えられる。\r\n図2 園児数別の男性保育者を雇用している園の割合\r\n つぎに常勤の保育者数別に男性保育者を雇用している保育所・幼稚園の割合を図3に示した。常勤保育者数かおる一定数(21名以上)を超えると男性保育者のいる園がいない園を上回ることが示された。図3より,常勤保育者数に比例して,男性保育者が雇用されていると考えられる。\r\n図3 全保育者数別の男性保育者を雇用している園の比率\r\n つぎに各園における男性保育者の人数について検討したところ,図4に示されるように,保育所・幼稚園ともに1名というところが最も多く,特に保育所においては,6割の園が1名のみと回答していた。一方で幼稚園においては,2名雇用している園の数は,1名雇用している園と同程度であることが示された。\r\n図4 雇用している男性保育者の人数\r\n 全保育者数に対する男性の比率を検討すると,表1に示すように,保育所・幼稚園ともに,5%以上1割未満の園が最も多かった。\r\n表1 常勤男性保育者の全保育者数に対する比率(園数)\r\n つぎに常勤の男性保育者の職務内容について検討を行った。表2に示すように,担当するクラスについて検討すると,保育所では,2歳児, 4, 5歳児の比率が高く,乳児保育についてはほとんど任されていないことが示された。これは先行研究(中田, 2004)の結果に追従するものであり,「3歳児神話」が保育所において存在していると考えられる。しかし本調査の結果では,保育所における3歳児の担当者の割合が2割弱にとどまり,その要因については,今後も検討を重ねていく必要があるだろう。\r\n表2 担当するクラスの子どもの年齢別の常勤の男性保育者の割合\r\n 常勤の男性保育者の職務内容についてみると,幼稚園ではフリーと回答した園は半数を上回っていた。また体育・運動を担当していると回答した園は4割弱であり,園バスの運転を兼務していると回答した園も45%であった。幼稚園においては,男性保育者は,担任ではなく,フリーの職務を担当することが多いということが示された。また幼稚園においては,体育・運動,園バスの運転など,「男性らしさ」を活かすことができると考えられる能力(米谷・角野,2000)が活かされる職務を男性保育者に任せることが多いのではないかと示唆される。一方,保育所においては,幼稚園と比較すると,過半数をこえる園で任せているといった職務内容は認められず,男性保育者としての職務は特に設けられていないのではないかということが推察される。\r\n表3 常勤の男性保育者の職務分担\r\n また男性保育者を雇用している園で,非常勤の男性保育者の人数について検討すると(図5参照),保育所・幼稚園,双方ともに雇用していない園が最も多かった。幼稚園では,2名以上雇用しているところもあり,全体的に保育所と比較して,幼稚園の方が非常勤講師が雇用される傾向にあることが示された。\r\n図5 非常勤の男性保育者数\r\n またつぎに,非常勤の男性保育者の職務内容について検討すると,保育所に比べて,幼稚園では非常勤の男性保育者を多く雇用していることが示された。幼稚園では,体育・運動の講師として雇用していると回答した園が最も多かった。また自由記述の回答もみると,スポーツクラブなどからインストラクターを派遣してもらうと回答している園も認められ,保育者として雇用していない園もあることが伺える。\r\n表4 非常勤の男性保育者の職務分担(園数)\r\n 男性保育者を雇用していない保育現場では,男性職員をもって,その役割を代替しているのではないかと考えられる。そこで男性保育者を雇用していない園について,男性の職員の有無について尋ねてみたところ,保育所では38園中21%,幼稚園では54園中88%の園で職員を採用していた。保育所に比べて幼稚園での男性職員の雇用が多いことが示された。また図6に男性職員の人数について示したが,保育所は,1名という園が多く,幼稚園の方が男性職員の人数が多いことが示された。\r\n図6 男性職員の人数\r\n 表5では保育所と幼稚園における男性職員の職種を示しているが,幼稚園においては,管理職や運転手として男性が勤務しており,一方で保育所においては,男性職員の職種として最も多いのは用務員であり,管理職,非常勤講師に昜匪が少ないことが示された。\r\n表5 男性職員の職種\r\n また現在,男性保育者を雇用していない園(n=92)に対して採用の意思について尋ねたところ,幼稚園では採用の意思がないという回答が7割を占め,一方保育所においても,採用の意思があると回答している園は3割弱であり,行政の判断にまかせるという回答は6割であった。保育所,幼稚園ともに採用の意思のある園は3割弱にとどまった(表6参照)。\r\n表6 男性保育者採用の検討の有無\r\n つぎに男性保育者を雇用していない園で,かつ将来的に採用の意志のある園に,「男性保育者に希望する条件」について尋ねたところ,幼稚園においては,「実習以外にインターンシップで優秀な人材を確保したい」,「体育・運動指導への期待」,「園バスの運転技能」,「保護者のスポーツやレクリエーションの指導」などがあげられた。一方,保育所では,男性保育者を雇用することは,男女共同参画社会の今日常識となるという回答が最も多かった。園独自のメリットというよりは,社会的な情勢にあわせて採用を検討するところが多いことが示唆される。公立園が多いために人事の権限がない場合もあると考えられるが,女性だけの歴史でつづられてきた現状の保育所に男性が入っていくためには,保育者としての資質,向上心や人格といったことが女性以上に厳しく問われていることが,自由記述の回答から推察された。\r\n表7 検討するうえでの考慮する条件\r\n 男性保育者を雇用していない園で,かつ将来的に採用の意志のない園に,男性保育者を雇用しない理由について尋ねた。まず幼稚園は34園,保育所は3園ということで,保育所に比べて幼稚園では,採用する意志がないことを明言していることが示された。表8にあげられているように,幼稚園においては,「将来性(長く雇用した場合の給与,ポストなど)に心配があるから」という回答が最も多く,つぎに「更衣室,トイレなど施設設備面の負担が大きいから」といった理由があげられていた。幼稚園では,男性保育者の雇用に関しては,まず終身雇用の可能性の高い男性に対しての雇用環境の整備,設備面での負担というハードルが高いことが示された。またその他として,「子どもの排泄・着替えなどで保護者から不評」,「異性関係の問題がおきやすい」,「一度採用したことがあるが,女性職員とうまくいかなかった」といった保護者・同僚との性にまつわるトラブル等があげられていた。また「男性保育者の採用経験がなく,また当面新規採用を考えていないため」,「体育の分野で男性職員に活躍してもらっているので,今は十分と考えているため」といった回答もあった。\r\n表8 男性保育者を雇用しない理由\r\n 一方,保育所では,採用する意志がないと回答した園は3園のみであったが,雇用しない理由としては,施設面の負担,またその他として「事業運営面での検討事項があるため」という回答が認められた。幼稚園・保育所ともに,雇用環境,施設面での負担,また園内での人間関係を考慮してといった意見が多く認められた。\r\n 2.保育現場で認識されている男性保育者の特徴\r\n 保育現場で認識されている男性保育者の特徴について検討するために,32項目について「とてもそう思う」から「全くそう思わない」までの5件法で尋ねた。保育所・幼稚園,男性保育者を雇用している園・雇用していない園の回答を含めた分布を図7に示した(「とてもそう思う」+「そう思う」の回答の比率)。\r\n 男性保育者の特徴として認識された項目は,「からだを使うダイナミックな遊びができる」,「園行事などの際に力仕事の主力となる」,「安全管理や不審者対応に期待できる」などといった「男性らしさ」・「体力」等と関連する項目であり,70%以上の保育所・幼稚園で,男性保育者の特徴として認識されていた。また「細やかな気配りができる」,「静かな遊びを子どもと楽しむことができる」,「子どもの心の変化に気付きやすい」といった【細やかさ】,「わかりやすく保育記録をとることができる」,「連絡帳などに読みやすい字を書くことができる」といった【記録】に関すること,「造形遊びが得意である」,などの7項目については,10%未満の保育所・幼稚園でしか,男性保育者の特徴として認識されていなかった。この結果は,先行研究(米谷・角野,2000 : 中田ら, 2004)が示した保育現場で認識されている男性保育者の特徴を支持するものである。\r\n図7 男性保育者の特徴 「とてもそう思う」+「ややそう思う」の回答の比率\r\n 3.保育所・幼稚園における男性保育者に対する認識の差の検討\r\n 保育所・幼稚園という園の形態が,男性保育者に対する認識との関係について検討した結果,図8に示すように,保育所と幼稚園において,男性保育者に対する認識においてχ2検定により有意な差がみられた項目は6項目であった。\r\n 「将来性(給与など)が心配である」という項目については,「そう思う」と回答した保育所は14%,幼稚園は70%であった。終身雇用の可能性の高い男性の雇用の問題は,保育所よりも,幼稚園においてより深刻に受けとめられていることが示されている。また全般的に性別役割分業意識は,幼稚園の方が保育所よりも強いことが示された。このことは自由記述においても認められ,幼稚園からは「男性らしさ」や「男性だからこそできること」を期待されている。幼保一元化の動きを視野に入れると,今後双方がどのように影響しあうのかを検討していく必要があるだろう。\r\n図8 保育所・幼稚園で差が認められた男性保育者に対する認識\r\n4.男性保育者雇用の有無別の男性保育者に対する認識の差の検討\r\n つぎに男性保育者の雇用の有無別で,男性保育者に対する認識に差が認められるかどうかを検討するために,χ2検定を行った。図9には,2群間で差が認められた項目を示した。\r\n その結果差が認められたのは,以下の3項目であった。まず「保護者に人気がある」という項目に関しては,雇用している園では52%が男性保育者の特徴として認識していたのに対して,雇用していない園では23%であった。男性保育者を雇用して,保護者からのよい人間関係を築いていると認識されていることが示されたと考えられる。自由記述においても,男性保育者は保護者との関係において特に父親に人気があるという報告や保護者からの信頼が厚いという報告も認められた。またつぎに「子どもに平等に接することができる」という項目に関しては,雇用している園の方が,雇用していない園に比べて男性保育者は子どもに対して平等であると認識していることが示された。多様なかかわりを子どもに提供するという視点から,雇用している園では男性保育者を評価していると考えられるのではないだろうか。また一方で,修理・営繕については,雇用していない園の方が,雇用している園よりも特徴として認識しており,男性保育者に期待されていると考えることもできるだろう。\r\n図9 雇用状況別で男性保育者に対する認識に関して差が認められた項目\r\n 5.男性保育者に期待されている資質・課題(自由記述の回答より)\r\n 男性保育者を雇用している園に対して,男性保育者に期待する資質について尋ねたところ,①男性らしさを発揮してほしい(活動性,父性的接触,ダイナミックな遊び,運動指導,防犯など),②女性のできること十αを身につけてほしい(バスの運転免許,運動指導,パソコン,会計事務,補助教諭としての資質,自然体験型の保育,制作など),③性は問題ではなく保育者としての人間性,・資質の高さ(社会常識,文章力,生活能力,リーダーシップ,女性の多い職場での人間関係構築能力,コミュニケーションスキル,計画性など),④給料が低く,ハードルが高くとも継続する覚悟と開拓者精神(変革精神旺盛な人,応用力,給与水準が低いので家族の理解が必要,チャレンジ精神,容易に保育の道を選ばず一生の仕事とする覚悟)といったことがあげられていた。男性保育者に期待することは園によって異なっているが(ジェンダーを考慮するかどうか,保育者としての資質の高さ,他の多様な技能など)期待されることは多く,女性に比べて,男性保育者の就職は厳しいことが伺え,保育現場からの期待を学生に伝え,個々の個性を活かしながら丁寧に学生を育てていくことが必要であると考えられる。\r\n また男性保育者の課題としては,①職場での人間関係(「女性とのコミュニケーションスキルが低いので困る」,「職場内の人間関係を考慮し,男性保育者は1名ではなく,2名以上を望む」,「男性保育者が入ることにより,職員同士が結婚することになると結婚退職などが生じて困る」),②性にかかわる問題(排泄・着脱のケアに関して保護者から不評,女性問題),③金銭面・環境面での課題(給料,設備,),④男性保育者が苦手とすると認識されていることを克服してほしい(楽器の演奏,記録,整理整頓,掃除,細やかな気配りなど)などがあげられていた。①については,授業,サークル活動,学生指導の場などで,男女で話し合う機会をなるべく多く設定し,女性の多い職場での人間関係づくり,コミュニケーションスキルなどで困ることなどを話し合う機会を設けることが必要ではないだろうか。\r\n また②については両性ともに,保育者としての性に関する倫理観を育成し,講義や相談の場などを設けて,学生時代から自らの性について,また他者が認識している性の問題について考える機会を設けていく必要があるだろう。また③については,授業や学生指導を通して,学生の能力を高める継続的に支援を行っていく必要があるだろう。\r\nまとめ\r\n 本研究では,まず本学の実習先を主とした神奈川県,東京都の保育所・幼稚園における男性保育者の雇用についての現状について把握することを目的とした。男性保育者を雇用している園の比率は,保育所,幼稚園,いずれも40%程度であった。民間園のみで比較すると保育所の方が幼稚園に比べて男性保育者の雇用が多いことが示された。この点については,国勢調査(平成12年度)によると,保育所で勤務する年齢層が5年前と比較して,20代が増加していることが示されている。そこで,今後の課題として,勤続年数も含めて雇用状況について検討していく必要があるだろう。また今回は認可園でのみ調査をおこなったが,無認可の園における現状も今後把握していく必要があるだろう。\r\n また職務内容については,幼稚園ではフリー,体育指導などを担当する男性保育者が多く,一方で保育所では,乳児保育の担当者が少ないことも認められた。その背後には,性別役割分業意識や3歳児神話などがあると考えられるが,今後,男性保育者を担任とすることに対する抵抗感,乳児の担当とすることへの抵抗感などについて詳細に質問を行い,保育者の性・世代・地域性なども考慮して検討し,男性保育者の雇用を促進するために,教育の現場でできることについて検討していきたい。\r\n またつぎに,本研究で得られた保育現場で認識されている男性保育者の特徴は,保育所・幼稚園のいずれにおいても「ダイナミックな遊び」「力仕事」など「男性らしさ」に関連しており,先行研究を支持するものであった。さらに,保育所・幼稚園の差を検討すると,保育所よりも幼稚園において性別役割分業意識が強いことが示唆された。今後幼保一元化にむけて,保育所・幼稚園双方ともに男性保育者に対する認識は影響をされることが予想されるが,養成校としては,どちらか一方でも男性保育者の特徴として認識されている項目について検討していきたいと考える。\r\n また雇用の有無別の比較では,雇用している園の方が,男性保育者は,子どもや保護者と良い人間関係を築いていると認識していることが示唆された。こうした肯定的な評価を活かして,質の高い男性保育者を育て,継続した雇用に結びつけていきたいと考えている。\r\n 今回の調査で得られた結果を活かし,保育現場の意向に応えられる男性保育者の養成に努めるとともに,男性保育者に対するイメージと実際の特徴の差異を明確にし,望まれる保育者養成を模索していきたい。\r\n引用文献\r\n今泉 利 2003 保育士養成に関する一考察一新保育士養成教育課程及び男性保育者の視点から 東海大学短期大学部生活科学研究所所報, 17, 5-10.\r\n菊地政隆 2002 男性保育者に対する態度一女性保育者・保護者・学生からみて 保育学研究,40(2), 205-211.\r\n厚生省 2000 保育所保育指針〈平成11年改訂〉フレーベル館\r\n文部科学省 1999 中学校学習指導要領(平成10年12月)解説 技術家庭編, 64-68.\r\n文部科学省 2000 高等学校学習指導要領解説 家庭編, 305.\r\n中田奈月 2004 男性保育士による低年齢児保育の困難『保育士養成研究』全国保育士養成協議会,19-27.\r\n中田奈月 2001 男性保育者のライフコースーコホー卜分析 社会学論集,8,奈良女子大学社会学研究会, 51-67.\r\n中田奈月 2000 男性保育者のライフコースキャリアの実態を通して 奈良女子大学社会学論集,7, 67-78.\r\n中田奈月・前迫ゆり・智原江美・石田慎二・高岡昌子・福田公教 2004 奈良県保育所における男性保育士の実態と課題 奈良佐保短期大学研究紀要, 12, 51-61.\r\n斉藤政子 2002 男性保育者についての意義と役割一子ども・女性保育者にとって男性保育者はどういう存在か 家庭科教育76(1),\r\n鈴木弘充一斉藤政子・木下比呂美 2000 男性保育者に関する調査研究(3)保護者を対象とした意識調査から 湖北紀要, 21, 35-45.\r\n社会福祉施設等調査報告(2001)\r\n竹澤昌子 1999 男性保育者へのまなざし一保育現場における男性保育者に関する意識調査より 沖縄キリスト教短期大学紀要299-310.\r\n米谷光弘・角野雅彦 2000 保育者養成における男性保育士の位置づけ 西南学院大学児童教育学論集, 26(2), 21-71.\r\n【付記】本稿の一部は保育者養成協議会第45回研究大会で発表を行った。\r\n"}]}, "item_creator": {"attribute_name": "著者", "attribute_type": "creator", "attribute_value_mlt": [{"creatorNames": [{"creatorName": "本多, 潤子"}], "nameIdentifiers": [{"nameIdentifier": "188", "nameIdentifierScheme": "WEKO"}]}, {"creatorNames": [{"creatorName": "小林, 育子"}], "nameIdentifiers": [{"nameIdentifier": "189", "nameIdentifierScheme": "WEKO"}]}, {"creatorNames": [{"creatorName": "櫻井, 登世子"}], "nameIdentifiers": [{"nameIdentifier": "190", "nameIdentifierScheme": "WEKO"}]}, {"creatorNames": [{"creatorName": "安村, 清美"}], "nameIdentifiers": [{"nameIdentifier": "191", "nameIdentifierScheme": "WEKO"}]}, {"creatorNames": [{"creatorName": "鈴木, 力"}], "nameIdentifiers": [{"nameIdentifier": "192", "nameIdentifierScheme": "WEKO"}]}, {"creatorNames": [{"creatorName": "成田, 眞"}], "nameIdentifiers": [{"nameIdentifier": "193", "nameIdentifierScheme": "WEKO"}]}, 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保育現場において認識されている男性保育者の特徴
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名前 / ファイル | ライセンス | アクション |
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本文(PDF) (1.6 MB)
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Item type | 紀要論文 / Departmental Bulletin Paper(1) | |||||
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公開日 | 2013-01-21 | |||||
タイトル | ||||||
タイトル | 保育現場において認識されている男性保育者の特徴 | |||||
タイトル | ||||||
言語 | en | |||||
タイトル | The Charateristic of male childcare workers perceived in childcare centers | |||||
言語 | ||||||
言語 | jpn | |||||
キーワード | ||||||
主題Scheme | Other | |||||
主題 | 男性保育者 | |||||
キーワード | ||||||
主題Scheme | Other | |||||
主題 | 幼稚園 | |||||
キーワード | ||||||
主題Scheme | Other | |||||
主題 | 保育所 | |||||
資源タイプ | ||||||
資源タイプ識別子 | http://purl.org/coar/resource_type/c_6501 | |||||
資源タイプ | departmental bulletin paper | |||||
著者 |
本多, 潤子
× 本多, 潤子× 小林, 育子× 櫻井, 登世子× 安村, 清美× 鈴木, 力× 成田, 眞× 高嶋, 景子× 中原, 篤徳 |
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著者別名 | ||||||
識別子Scheme | WEKO | |||||
識別子 | 196 | |||||
姓名 | Honda, Junko | |||||
著者別名 | ||||||
識別子Scheme | WEKO | |||||
識別子 | 41 | |||||
姓名 | Kobayashi, Ikuko | |||||
著者別名 | ||||||
識別子Scheme | WEKO | |||||
識別子 | 27 | |||||
姓名 | Sakurai, Toyoko | |||||
著者別名 | ||||||
識別子Scheme | WEKO | |||||
識別子 | 31 | |||||
姓名 | Yasumura, Kiyomi | |||||
著者別名 | ||||||
識別子Scheme | WEKO | |||||
識別子 | 42 | |||||
姓名 | Suzuki, Tsutomu | |||||
著者別名 | ||||||
識別子Scheme | WEKO | |||||
識別子 | 43 | |||||
姓名 | Narita, Makoto | |||||
著者別名 | ||||||
識別子Scheme | WEKO | |||||
識別子 | 30 | |||||
姓名 | Takashima, Keiko | |||||
著者別名 | ||||||
識別子Scheme | WEKO | |||||
識別子 | 44 | |||||
姓名 | Nakahara, Atsunori | |||||
抄録 | ||||||
内容記述タイプ | Abstract | |||||
内容記述 | 本調査は,本学実習先を主とした神奈川県・東京都内の保育所・幼稚園計161園を対象とした男性保育者に関する意識調査の報告である。本学に入学した学生の4割は男子学生であり,養成校として,男性保育者の養成にむけて,(1)男性保育者の勤務状況の実態,(2)保育現場で認識されている男性保育者の特徴,(3)幼稚園と保育所における男性保育者に対する認識の差,(4)男性保育者雇用の有無別の男性保育者に対する認識の差,の4点を検討することを目的とした。結果より,まず男性保育者は40%の園で雇用されており,幼稚園ではフリー・体育講師を担当する者が多く,また保育所では乳児保育は担当していないことが示された。また男性保育者の特徴については,保育所・幼稚園で認識に差が認められ,性別役割分業意識は,幼稚園の方が保育所よりも強いということが示唆された。また男性保育者を雇用している園の方が,男性保育者が子どもや保護者と良い人間関係を形成していると認識していることが伺えた。今回の調査で得られた結果を男性保育者の養成に活かしていきたいと考えている。 | |||||
書誌情報 |
田園調布学園大学紀要 en : Bulletin of Den-En Chofu University 巻 1, p. 153-176, 発行日 2007-03-17 |