WEKO3
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介護過程の具体的な展開は,実習Ⅲで介護計画立案の一連の過程を実践し介護サービスの提供ができる能力を養うための指導を行っている。介護目標の設定にあたっては,利用者のプラス面に着目した生活機能向上に視点をあてているが,生活全般の活性化のための具体的な目標設定が不十分な部分がある。問題のポイントはアセスメントであると思われる。利用者の現時\r\n点の生活と過去の状況,将来の望ましい生活についてどのようなニーズがあるか把握し,課題や全体像,生活環境とのかかわりで課題を見つけ出すことが必要である。アセスメントの段階で学生と問題を共有し援助目標を設定しやすくするのが教員の役割と思われる。\r\n〈キーワード〉\r\n介護過程 自立支援 生活課題 アセスメント 生活機能 ICF\r\n\r\n〈はじめに〉\r\n 介護援助における介護目標の設定は,利用者を中心に具体的にされることが求められている。それは介護目標を如何に設定するかであり,介護過程の展開のための教育も十分に検討した上で行うべきであると考える。\r\n 介護教育は転換期にあり,介護福祉士の生涯を通じた能力を開発するために新たな教育内容の見直しが考えられている。基礎的な能力の付与は当然のことであるが,介護実践の場でエビデンスに基づくケアが求められ,介護過程の教育はますます重要になる。\r\n 現在,介護過程は「介護概論」で基礎的な考え方を教育し,「介護技術」,「介護実習指導」「介護実習」の教科で具体的に展開している。多くの教科で取り上げているのは,それだけ重要で利用者の援助過程を充分に考えて実践してほしいからでもある。今後の介護\r\n教育内容の改正・カリキュラムの見直しの予定では,介護過程を独立した教科として150時間を設定し,他の科目で学んだ知識・技術を統合して介護過程を展開できる能力を身につけるとしている。\r\n 当大学の授業においても,介護過程の具体的な展開は,実習Ⅲで利用者の情報把握,アセスメント,介護計画立案の一連の過程を実践し介護サービスの提供ができる能力を養うための指導を行っている。\r\n 昨年から介護目標の設定にあたって,利用者のプラス面に着目した生活機能向上に視点をあて,情報収集の様式も改善したが,生活全般の活性化のための具体的な目標設定が不十分な部分がある。そこで,その問題点を明らかにし,介護過程教育の新たな展開のため\r\nの試論をまとめたので報告する。\r\n\u003c用語の操作的定義〉\r\n①生活機能 「人が生きること」の全体像を示し,「心身機能・身体構造」,「活動」,「参加」のすべてを含む包括概念である。これは生命,生活,人生の統合したものといえる。生活機能の意義は健康状態や心身機能の障害そのものだけでなく生活,人生への影響を重視することにある。\r\n②心身機能\r\n 心身機能とは,身体系の生理的機能・心理的機能をさす。\r\n 精神機能や感覚機能と痛み,その他の免疫系や呼吸器系,消化器系,代謝,皮膚などの機能・構造を含む。「心身機能・構造」に問題が生じた状態を「機能障害」,「身体構造」は「構造障害」という。\r\n③活動\r\n 活動とは,生活レベルの様々な目的をもったひとまとまりの行為をいう。食事や更衣,入浴,排泄,洗面,歩行など身の回りの行為だけでなく,余暇活動や家事・職業的な活動も含まれる。活動は1日の朝から晩までの生活に必要で,それを成り立たせている様々な行為である。\r\n④参加\r\n 参加とは,生活・人生場面への関わりのことである。仕事や家庭内での役割や地域社会への参加など人生においての役割を果たすこと,その他色々な社会参加のこと。これに問題が生じた状態を「参加制約」という。\r\n⑤環境因子\r\n 人々が生活し,人生を送っている物的な環境や社会的・制度的環境,人々の社会的な態度による環境を構成する因子のことである。具体的には生活環境(自宅か施設か,居室やトイレなどの設備),用具(車椅子などの福祉用具),生産品(食品など)があり,社会的・制度的環境はコミュニティーや社会における公式または非公式な社会構造,サービス,全般的なアプローチまたは制度であり個人に影響を与えるもの。\r\n 地域活動,政府機関,交通のサービス,更に法律,公的や私的,任意サービスや制度,政策などがある。人的環境には家庭や職場,学校などの場面を含む個人にとって身近な環境の中で人が接触する家族や親族,友人,サービス提供者,保健など他職種の専門職,他者との直接的な接触や関係を含む。\r\n⑥個人因子\r\n 個人の人生や生活の特別な背景であり,健康状態や健康状況以外のその人の特徴のことである。\r\n 性別,人種,年齢,その他の健康状態,体力,ライフスタイル,習慣,生育歴,困難への対処方法,社会的背景,教育歴,職業,過去及び現在の経験(過去や現在の人生の出来事),全体的な行動様式,性格,個人の心理的資質,その他の特質など個人に起因する属性が含まれる。\r\n\r\n1.研究目的\r\n 介護計画は個別的で,利用者の心身の機能や生活特性を重視したものであることは言うまでもない。\r\n 利用者の生活機能の現状や,価値観を尊重した適切なアセスメントがされ介護計画をたてる必要があるが,心身の機能に重点が置かれやすいのが現状である。機能を維持・回復させるのは生命・生活・人生のすべての側面に働きかけ,その人のもつ潜在的な生活機能の向上にむけて意思を引き出すものと考える。\r\n 介護過程を学習し援助計画をたてた事例をもとに,情報収集・アセスメント・介護目標にいたる経過を分析し,指導のあり方と指導上の問題を明らかにすることを目的とする。\r\n2.研究方法\r\n 研究方法\r\n 介護過程実践事例の記録分析\r\n 学生の実習Ⅲにおける記録,及び介護技術講習会において介護過程を学び施設等で利用者の介護を実践しているホームヘルパー等の介護計画表を分析対象とした。\r\n 介護過程に沿った介護計画表の情報収集,アセスメント,介護目標の設定について特徴を分析。特に「活動の向上訓練は目指す人生(参加)の具体像であるさまざまな活動を可能にしていくもの」であることから活動の個別性(相対的独立性)に着目した。利用者が「どのような人生を送りたいと望んでいるか,家族は何を望んでいるか」など「生活の希望」にかかわる情報収集の有無とアセスメントを重視して分析した。\r\n 研究対象\r\n①学生Kの介護実習Ⅲの介護計画表と記録。 2005年9月,3年次に介護老人福祉施設実習で行った1利用者の介護過程実践の記録。\r\n②介護技術講習参加者の介護計画表。参加者は介護老人福祉施設,介護老人保健施設,身体障害者療護施設,有料老人ホーム,デイサービスセンター,グループホーム,訪問介護ステーションなどの施設職員70名,介護療養型医療施設などの職員5名,学生その他4名,計79名。\r\n 介護技術講習会では介護過程展開の講義を150分実施,その後援助対象者の介護計画を介護過程に沿って立案。介護計画のための様式は介護技術講習で事例展開に使用する様式を使用した。\r\n3.研究結果\r\n 1.学生K,介護福祉専攻3年次の実習Ⅲにおける個別介護計画立案と見直し修正の過程\r\n 1)実習Ⅲの学習目標\r\n 学生が担当した利用者の介護計画を立案し実践する。\r\n 2)情報収集\r\n 従来の情報収集シートは,利用者のフェイスシート,入所理由,既往歴,家族関係,入所時と現在の身体的・精神的状況,生活歴そして生活状況と介護状況であった。援助計画のための生活状況の把握は食事や排泄,移動の状況,コミュニケーションや精神・身体の具体的状況であって,ADL中心の情報把握であった。(表1)\r\n 17年度から介護における目標のあり方を具体的にするために,「参加」とその具体像である「活動」のレベルにおき,生活機能向上を重視した目標設定のプロセスを踏んで進めていく指導を行った。\r\n 利用者の情報収集はICFモデルに添って行うこととして,アセスメント,介護の目標を設定し実施する。この過程では表2の情報収集用紙の活用し,その内容として以下の目安を考慮した。\r\n①「健康状態」については,既往歴(急性あるいは慢性の疾患,外傷,先天性異常など)や薬(下剤など)と他職種(医師や看護師など)の見解を記入する。\r\n②「心身機能」については,「支えて立位をとることは可能だが疲れてしまう」など現在の身体機能・精神状態など自分が利用者との関わりから得た見解を記入する。\r\n③「活動」については, ADLをはじめとする歩行・食事・排泄・入浴・更衣などの利用者ができること(能力)・実際にしていること(実行状況)を記入する。\r\n④「参加」については,「毎週土曜日に作業療法に行く」などの利用者が実際に参加しているクラブ・サークル活動や訓練,余暇活動,趣味,利用者がしたいことなどを記入する。\r\n⑤「環境因子」については,\r\n 物的:「居室の外にトイレと洗面台がついている二人部屋」など生活環境・福祉用具・自然環境について記入する。\r\n 人的:「敬老会などの行事に次男夫婦が面会にくる」など家族・親族・友人・援助者との関係について記入する。\r\n 社会・制度的:介護保険制度など公的・私的・任意のサービス・制度・政策を記入する。\r\n⑥「個人因子」については,性や年齢・生活歴・ライフスタイル・価値観について記入する。\r\n3)情報の整理\r\n 事例:97歳,女性,骨折後老人保健施設に入所,中等度認知症,要介護3.\r\n 以上の情報から「している活動」と「できる活動」をアセスメントし,参加場面を利用者が生き生きと楽しめる援助計画をたてた。(表2)\r\n4)介護計画\r\n 学生Kが実習中に立案した介護の目標は,軽度認知症と慢性関節リュウマチによる右手の握力低下・変形を可能な限り遅らせる援助であった。もの忘れや軽度の失見当識については,対応の仕方で興味を持つことができ,積極性をひきだすことが可能と判断した。右手のリハビリについては,利用者の「手が悪いから昔やっていた裁縫も今は出来ない」という言葉から「裁縫がやりたい」という予測を立てて,リハビリ(参加)のテーマとして実施項目に加えた。しかし,実際は利用者に「何を作りたいのか」,「本当に裁縫をやりた\r\nいのか」について日常の関わりや観察によってさらに情報収集しなかったことから,裁縫の継続ができなかったことを反省している。\r\n 結果として介護計画実施途中でプラン変更をしなければならなくなった。「本人が望んでいること」を予測することは大切だが,明確な予測に基づいた具体的な設定がなされなかったためにこのような結果になった。さらにICFモデルを活用することで不足している情報や偏っている情報を見つけることができたとしている。\r\n表2 1CFモデルを活用した情報整理\r\n表2 個別介護計画\r\n 「本人が希望することができるようになる」という明確な予測に基づいて具体的に設定がなされない場合は介護の目標が不明確となることに気がついている。\r\n 1)介護の目標設定のプロセスとして,主目標(「参加」レベルの目標)とその具体像である「活動」レベル目標(「する活動」,そしてその実現に必要な「心身機能」レベルの目標を決定することである。さらに重要なのは参加レベルの目標から活動レベルの目標が決まり,その実現に必要な心身機能レベルの目標が決まってくる。「参加」と「活動」を一体として生活機能の各レベルにわたる評価結果や実行プログラムをもとに予後予測を行い最良の目標を決めていくのである。目標設定は各レベルの評価ステップをふんで具体的に\r\nしていく必要がある。\r\n1)介護技術研究会「介護技術講習会テキスト」日本介護福祉士養成施設協会 平成17年3月 p.3\r\n5)実施及び評価\r\n 学生が注目したのは,「本人らしい楽しい生活」を目標にして,このことが認知症の進行を遅らせると考えた。また,指先の機能低下が生活行動の低下を促進することから指先を使う機会を作る工夫をしている。この利用者は裁縫が得意との情報を得て,お于玉つくりをすすめる。実際には集中する時間が15分程度であったためプランを変更して自分が好\r\nきな事,やりたいことを利用者と共に見つける工夫をした。\r\nその後,情報をさらに整理して実習中に立案した介護計画を見直し,再度計画を立て直した。\r\n 学生の反省は,利用者の「できること」,「できないこと」のみに焦点をあてて援助計画をたてていたことを反省し,心身機能だけではなく,「活動」と「参加」について利用者の言葉や活動の様子に視点を向けて「本人が望んでいること」を把握する計画を立てた。\r\n さらに情報整理し,利用者にとって生活の楽しみとは何か,生活の中で何を望んでいるのかなど利用者の意欲につながる情報が不足していることに気が付いた。\r\n表3 個別介護計画(再)\r\n3)情報収集\r\n介護援助における目標設定のプロセスは,「参加」レベルの目標が主目標であり,「活 2.介護技術講習会における介護援助の目標\r\n 1)介護技術講習会\r\n 介護技術講習会とは,介護福祉士国家試験・実技試験免除のための行う講習会である。\r\n厚生労働省は,平成15年に「介護福祉士国家試験の在り方等,介護福祉士の質の向上に関する検討会」を設置した。検討会報告書で提言された具体策の一つとして,介護福祉士国家試験実技試験については受講者の申請に応じて「介護技術講習会」を修了した者に実技試験を免除する制度を導入した。\r\n 介護技術講習会は17年度から実施し,その内容は基本的介護技術である「介護過程の展開」,「コミュニケーション技術」,「移動,排泄,衣類着脱,食事,入浴等の介護技術」である。この講習会の講義と演習は,相互に関連し系統立てて修得することが求められ,重要なポイントは「生活機能の向上」の目標にそったアセスメント,援助の目標設定,目標達成度の評価である。\r\n 2)対象\r\n 今回,介護技術講習会において介護過程の講義を150分実施。その後,介護計画を作成した79事例(17年度・18年度介護技術講習会受講者)の介護計画表の援助目標を分析した。\r\n 79事例の内訳は,男性37名(46.8%),女性42名(53.2%)。施設生活者33名(41.8%),在宅生活者46名(58.2%)である。年齢は男性34歳~91歳,女性50歳~101歳,平均年齢は男性71.4歳,女性72.0歳,在宅生活者の平均年齢は施設生活者より高い。\r\n表4 事例の内訳\r\n表5 平均年齢\r\nその実現に必要な「心身機能」レベルの目標が決まってくる。参加と活動は表裏一体であるが,その具体像が情報収集の段階でどのように把握されているか検討した。情報収集項目を見ると,参加,活動レベルの目標を具体化するための本人や家族の希望(どのような生活・人生を生きたい)がどれだけ具体的に把握されているか注目した。\r\n 79事例のうち,本人・家族の「参加・希望」に関する情報をとらえていたものは31名(39.2%)で在宅生活者22名,施設生活者9名であった。その内容を表6に示した。\r\n表6 本人・家族の参加・希望を把握した事例\r\n 報収集の段階で,本人や家族が今後の人生をどのようにしたいと希望しているか把握した31名については,歩行や日常生活自立を希望しているのは当然であるが,自己の生き方や希望をとらえて援助目標の設定をしている。\r\n 「希望」に関する情報が収集されていなかった事例は48名(60.8%)で,在宅生活者24名,施設生活者24名である。事例の参加・希望の状把握状況を表7に示す。\r\n表7 事例の参加・希望の情報把握状況\r\n 31事例の参加・希望の情報把握は「心身機能」76項目,平均2.5,「活動」59項目,平均1.9,「参加」19項目,平均0.6, (希望)43項目,平均1.4であった。\r\n参加・希望の情報把握がされなかった48事例は「心身機能」113項目,平均2.4,「活動」126項目,平均2.6,「参加」2項目,平均0.04, (希望)0項目であった。\r\n 4)援助の目標設定\r\n 本人,家族の希望をとらえてアセスメントがされた31事例の,「このようなことをしたい」と希望する内容で最も多かっだのは「身辺の自立」で,その理由は「歩きたい」,「外出したい」,「友人と交流」,「家族に迷惑をかけたくない」,「職場復帰」,「薬の自己管理」,「家事・園芸・畑仕事をしたい」,「施設から自宅へ帰りたい」などであった。その他,趣味の「音楽,手芸,絵画」などのサークル活動に復帰したい,「将棋・碁・マージャンをしたい」,「同窓会に参加したい」などであった。\r\n 家族の希望は「自分らしい日常を過ごしてほしい」,「無理のないペースで自立できるように」,「目標を持って生活してほしい」などであった。情報分析の結果,設定された介護目標は「デイケアでレクリエーションに参加と衣食・排泄行為の自立」,「歩行訓練による体力の向上と生活機能向上」,「デイケアで趣味の実施と他者と交流」,「移動の自立と趣味を通して生活拡大」,「歩行の維持と趣味の時間の充実」,「余暇活動の充実と歩行能力の維持」などADLの維持拡大と生活を豊かにするケアヘの参加をすすめる目標が設定されて\r\nいた。\r\n 参加・希望の項目の把握がされてない1事例について,夜間オムツに排泄しているので「自力でポータブルトイレに移動」と介護目標がたてられていた。問題は息子にトイレの依頼が言えないためで,利用者はどのような援助を望んでいるのか,どのようなプロセスをふめば問題解決につながるか明確な目標が示されていない。\r\n 「ADL自立度を高める」,「生活パターンの改善」,「みまもり」などの介護の目標も心身機能を中心にした情報分析にとどまっていた。\r\n4.考察\r\n 1)学生の実習Ⅲにおける個別介護計画立案と見直し修正の過程について\r\n ①介護計画の立案にあたって,第1に介護における目標の設定のプロセスを踏むことが重要である。目標設定にあたって,目標の設定のプロセスを踏むための情報収集の整理を行うことである。学生が気づいたことは利用者が何を望んでいるかを日頃から把握しておくことが必要ということであった。新たな情報収集用紙を活用し,プラス面に着目した生活機能向上に視点をあてて,利用者が「どのように生きたいか」という具体像を考えたからである。短い実習期間で難しさはあるが,「~がしたい」「~が好き」「~をしていた」\r\n等から何とか利用者の「参加・希望・意欲」に近づける介護援助の努力をした結果である。従来,「歩行できないから歩行の自立」を,「オムツをしているからオムツをはづす」になりやすいが,それだけでなく自立の過程において利用者が何を望み,意欲的に生活ができるかということである。利用者が自から自己改革に向かい,援助者が心身機能の維持・改善に努める関係をつくることである。\r\n 具体的な展開として,学生は利用者Oさんの右手の機能低下を防ぎ,一日,一日を大切にして楽しみのある生活をめざす」ことを計画した。軽度の認知症があり,「昔は裁縫が得意で着物も縫ったことがあるが,手が悪いから今は裁縫もできない」などと話していることに注目した。\r\n 右手の機能低下を防ぐためのリハビリ計画と「楽しみのある生活」と結びつけることが介護としての目標でなければならない。援助を受ける側の自己決定のもとで介護計画をたてるために「今は裁縫もできない」寂しさを他の方法で生き生きさせることができるはずである。\r\n 利用者は何を望んでいるか,行動観察と日頃のコミュニケーションの中から「できるかぎり自分でやりたい」という気持ちがアセスメントされれば「楽しみのある生活」をめざすことが可能となる。\r\n 再度計画の建て直しからOさんの意欲や能力などプラスのアセスメントがされ,介護目標を決定するのは介護を受ける側であることが理解される。\r\n 介護計画指導において,利用者の「身体機能状況,精神機能状況,環境である社会環境状況についでは現時点だけでなく過去の状況,さらには将来の望ましい状況について把握し,課題やニーズの全体像を理解する」ことが生活上の課題をとらえることになる。\r\n 2)介護技術講習会受講者の介護計画表の分析について\r\n 介護技術講習会受講者の95%は施設や在宅で働くヘルパーなどの介護専門職である。いわゆる身辺介護技術に関しては実務者であり,多くの利用者にかかわっている経験者である。\r\n 介護技術講習会では,介護過程展開の講義の前提として,介護実践は一人ひとりの利用者が望む生き方を実現させていこうとする目標を持って積極的な介護活動をめざすものであり,アセスメントの客観性と課題達成のための根拠を明確にする思考過程の重要性を指摘した。\r\n 介護における目標設定のプロセスを「ICF : 機能分類」モデルを活用したが,受講者にとっては新しい概念であり,なじみの薄さもあってとらえ難いものであった。\r\n 講習会のテキストには,介護過程の展開試案を事例で提示している。\r\n 事例Aについては,情報収集の段階で心身機能2項目,活動4項目,参加・希望4項目,環境因子1項目,個人因子1項目で,介護目標はすべての項目をアセスメントした結果,心身機能の自立2項目(できる活動),活動1項目,参加・希望1項目に整理されていた。事例に基づいて整理することを提案したが,受講生に十分理解されたか疑問が残る。\r\n 情報収集の段階で,本人や家族が今後の人生をどのようくにしたいと願い,希望しているか把握したのは31名にとどまったが,本人・家族の「願いや希望」に関する情報をとらえ\r\nてアセスメントをしていた事例は,本人・家族の「願いや希望」に視点をおいて働きかける工夫がされていた。\r\n 本人・家族の「願いや希望」の情報が把握されなかった48事例と比較すると「活動」と「参加」の項目が少なく,心身機能の向上をめざす利用者が意欲的になり,生活全体の活発化につながる主体性をひきだすことは難しいと思われた。\r\n また,介護計画のための課題が「本人が希望することができるようになる」という明確な予測に基づいて具体的に設定がされなかったために,介護の目標が不明確となった。心身機能と活動,活動と参加の循環を最良なものにするために,参加レベルに働きかけて心身機能の向上をばかり,「生活全般の活発化」のために介護過程展開の指導のあり方を,さらに工夫する必要があると思われる。\r\n 3)介護過程の教育にあたって\r\n 介護過程の教育のポイントはアセスメントにあると思われる。アセスメントは現時点の状態をみてできない部分を向上さるといった課題を設定することが多いが,過去の状況(これまでの人生を振り返って,どのように思っているか,満足している点やもっと進めたいことなど)や今の生活と将来の望ましい状況について把握して課題や全体像,生活環境とのかかわりで課題を見つけ出すことが必要である。アセスメントの段階で学生と問題を共有し援助目標を設定しやすくするのが教員の役割と思われる。\r\n つまり,アセスメントの段階で利用者がどのような生活を求めているか,何のためのリハビリと考え意欲を持ち続けられるかを学生とともに検討する姿勢が必要であろう。\r\n すでに介護実践の場で活躍している介護技術講習会受講者への指導については,目標設定のプロセスに関する指導を丁寧に行う必要がある。介護技術講習会のテキストでは,事例をもとに介護過程と介護技術と結びつけて実践するように計画されている。移動,排泄,衣服,食事,入浴介護の演習においてもテクニックではなく,利用者の心身機能や二-ズにそった自立支援がポイントになる。\r\n 介護過程については受講者の各自が持参した事例を通してグループワークが行われる。\r\nグループワークでは事例発表,共通課題の整理が目的であるが,介護は多角的であり個別を重視した思考過程が求められること,何よりも利用者の価値観を重視する必要性を理解することが求められる。\r\n参考文献\r\n① 大川弥生『新しいリハビリテーション一人間「復権」への挑戦-』講談社新書 2004\r\n②「高齢者リハビリテーションのあるべき方向」普及研究委員会資料\r\n③ 大川弥生「介護保険サービスとリハビリテーション~ICFに立った自立支援の理念と技法」中央\r\n 法規出版 2004\r\n④ 介護技術研究会「介護技術講習会テキスト」日本介護福祉士養成施設協会 平成17年\r\n⑤ 白澤正和「介護福祉の本質を探る」-ソーシャルワークとの関連で一 介護福祉学2006Vol.l3\r\n⑥ 川井奈保子「ICFにおける高齢者支援についての研究」田園調布学園大学 卒業研究 2006.12\r\n"}]}, "item_creator": {"attribute_name": "著者", "attribute_type": "creator", "attribute_value_mlt": [{"creatorNames": [{"creatorName": "柴原, 君江"}], "nameIdentifiers": [{"nameIdentifier": "162", "nameIdentifierScheme": "WEKO"}]}]}, "item_files": {"attribute_name": "ファイル情報", "attribute_type": "file", "attribute_value_mlt": [{"accessrole": "open_date", "date": [{"dateType": "Available", "dateValue": "2013-03-12"}], "displaytype": "simple", "download_preview_message": "", "file_order": 0, "filename": "1_2.pdf", "filesize": [{"value": "1.1 MB"}], "format": "application/pdf", "future_date_message": "", "is_thumbnail": false, "licensetype": "license_11", "mimetype": "application/pdf", "size": 1100000.0, "url": {"label": "本文(PDF)", "url": "https://dcu.repo.nii.ac.jp/record/4/files/1_2.pdf"}, "version_id": "2391c22d-4206-4140-b8ac-7751a8f6945c"}]}, 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名前 / ファイル | ライセンス | アクション |
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本文(PDF) (1.1 MB)
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Item type | 紀要論文 / Departmental Bulletin Paper(1) | |||||
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公開日 | 2013-01-21 | |||||
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タイトル | 生活機能向上の目標に視点をおいた介護過程教育の試論 | |||||
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タイトル | A Study of the Care Process Education which set the Viewpoint at the Target of the Improvement in Life Functional | |||||
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主題 | 介護過程 | |||||
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主題 | アセスメント | |||||
キーワード | ||||||
主題Scheme | Other | |||||
主題 | 生活機能 | |||||
キーワード | ||||||
主題Scheme | Other | |||||
主題 | ICF | |||||
資源タイプ | ||||||
資源タイプ識別子 | http://purl.org/coar/resource_type/c_6501 | |||||
資源タイプ | departmental bulletin paper | |||||
著者 |
柴原, 君江
× 柴原, 君江 |
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著者別名 | ||||||
識別子Scheme | WEKO | |||||
識別子 | 163 | |||||
姓名 | Shibahara, Kimie | |||||
抄録 | ||||||
内容記述タイプ | Abstract | |||||
内容記述 | 介護教育は転換期にあり,介護福祉士の生涯を通じた能力を開発するために新たな教育内容の見直しが考えられている。特に,介護実践の場でエビデンスに基づくケアが求められ,介護過程の教育はますます重要になる。介護過程の具体的な展開は,実習IIIで介護計画立案の一連の過程を実践し介護サービスの提供ができる能力を養うための指導を行っている。介護目標の設定にあたっては,利用者のプラス面に着目した生活機能向上に視点をあてているが,生活全般の活性化のための具体的な目標設定が不十分な部分がある。問題のポイントはアセスメントであると思われる。利用者の現時点の生活と過去の状況,将来の望ましい生活についてどのようなニーズがあるか把握し,課題や全体像,生活環境とのかかわりで課題を見つけ出すことが必要である。アセスメントの段階で学生と問題を共有し援助目標を設定しやすくするのが教員の役割と思われる。 | |||||
書誌情報 |
田園調布学園大学紀要 en : Bulletin of Den-En Chofu University 巻 1, p. 1-15, 発行日 2007-03-17 |