WEKO3
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今日,高等教育を取り巻く状況は,高等教育の大衆化,学術研究の高度化,社会経済の変化などにより,大きく変化している。中でも,近年の情報通信技術の進展はめざましく,我が国や世界各国において高度情報通信社会の実現に向けた様々な取組が活発になっている。このように高度情報通信技術(インターネット)の普及・高速化により,動画・音声を同時に転送するテレビ会議システム(以後テレビ会議システムと呼ぶ)の利用が現実的になってきている。テレビ電話を利用して,離島地域の学生などを対象に遠隔授業を行う試みが,多くの教育機関で試行されており,事実,大学設置基準の見直しにより「遠隔授業」による単位認定が大学学部で60単位まで認められている。また,e-Japan構想の中には初等/中等教育にも遠隔教育を普及させていく考えも盛り込まれており,学校教育全般において,今後さらに遠隔授業の活用度が高まっていくと考えられる。\r\n しかし,従来の遠隔授業では大がかりな機器の設置や複雑な通信機器の操作が必要となり,講師の他にIT技能を持った技術者が両拠点で作業を行い,遠隔授業を開催するために講師1名,技術者2名の3名体制で実施する必要があった。このように,遠隔授業の実現には,人件費や回線の維持費,機器の購入費用などの負担が必要となり,多くの大学では,専門のスタッフを配置し複数の離れたキャンパス間を光回線や衛星回線で結び,大学内の教室の一部として遠隔授業を実施している例が多い。\r\n 本研究は,従来は大掛かりな設備・専門の人材を必要としていたTV会議システムを手軽に構築できる仕組みを考案し,実際の福祉現場などの学外施設から遠隔授業を可能し,実際の教育効果を測定することを目的としている。\r\nⅡ 遠隔授業の必要性\r\n 本学では,社会福祉・幼児教育に貢献する人材を育成しており,在学中から学生が福祉施設や保育施設において現場スタッフと同様に業務に携わる実習教育を行っている。現場での作業に支障をきたさないよう大学での事前教育で多くの指導を行っているが,教科書や教員の講義を聞くだけでは,福祉現場に訪れた経験が無い学生の場合,正確に現場の雰囲気が伝わらないことがある。そこで,福祉現場で撮影した写真やビデオ教材を利用したり,福祉現場のスタッフや施設利用者を大学に招いて学生に現場の生の声を聞かせることにより,講義内容にリアリティーを持たせる工夫を行っている。\r\n しかし,現状では外部講師を招く回数が少なく,高齢または身体に障害がある利用者を大学に招くことは困難であり,利用者の生の声を学生に伝える事は難しい状況である。そこで,テレビ会議システムを利用した遠隔授業が実現できれば,身体に障害がある利用者や遠隔地の施設職員の話を学生に聞かせることが可能であると考えた。実際に,福祉現場からの遠隔授業が実現すれば,次のような効果が期待できる。\r\n● 地理的・制限から,実際の見学が困難な遠方地の福祉施設の状況を映像・音声により学生に伝える事ができる。\r\n● 1台のカメラ映像を同時に複数の学生に見せることが出来るため,実際の見学では不可能な規模の人数による施設内見学が可能となる。\r\n● 情報の流れが片方向となるビデオ教材と違い,ビデオ会議システムの両方向通信であれば,教員や学生のリクエストにより,撮影する施設内の映像や講義内容を選択できる。\r\n● 普段接する機会の少ない高齢者・障害者・児童などの施設利用者と本学の学生とのコミュニケーションが可能となる。\r\nⅢ TV会議システムの必要条件\r\n 福祉施設の職員は普段から多くの業務を抱えており,テレビ会議システムによる遠隔授業のために複数のスタッフを長時間拘束すると,本来行わなければならない一般業務が滞り結果として施設利用者の不利益に繋がる可能性がある。そこで遠隔授業を依頼する福祉施設に可能な限り負担がかからないよう配慮する必要がある。そのためにはTV電話に必要な機器の設置や操作はできるだけ簡単にする必要がある。本研究で構築するシステムは,下記に示すように「開催場所の非固定化」・「装置の簡素化」。「操作の簡素化」に関しての対策を行っている。\r\n 「開催場所の非固定化」\r\n ブロードバンドが普及する以前では遠隔授業の実現のために,高価な専用線の導入が必要であり,年間数十~数百万円の通信費が必要でした。現在では, ADSLやFTTHといった安価な高速回線が普及しており,多くの福祉施設でホームページ閲覧やメールのために,これらの高速回線を導入している。本システムでは,施設に導入されているADSL・FTTHなどのインターネット回線を利用してTV会議システムを実現している。\r\nただし,多くの施設ではネットによる情報流出を防ぐためホームページ閲覧やメールといったサービス以外のネット利用が認められておらず,それらを遮断する装置(ファイアーウォール)が導入されている可能性がある。その場合,ファイアーウォールの無効化などの処置を施設に依頼する必要があるが,これには専門の知識が必要となり設定ミスによる情報漏えいの危険性も増加する。そこで,本システムではVPN*1を利用して仮想的な専用回線を構築し,施設側ではネットワークの設定変更を不要とした。VPNの利用は,施設内のネットワーク利用規定に反する可能性があるため,利用に関しては事前にVPNの仕組みや危険性について説明し,施設側の了解を得て利用している。\r\n 「機器の簡素化」\r\n 多くの施設で,コンピュータやインターネット回線が導入されているが,コンピュータに関する専門的な知識を持つ職員が在籍していない可能性がある。そこで遠隔授業を行う場合は,事前に施設に出向き,機器の取り付け,設定,動作確認を行う必要があった。しかし,対象となる施設が遠方にある場合,大学スタッフが機器の取り付け・設定に出向くことが困難である。その様な場合,TV会議システムに必要な機器を施設に郵送して,施設職員でも設置が出来るよう,機器構成を簡素化することが可能であれば,実際に出向くことが困難な遠方地であっても,遠隔授業が可能となる。そこで,本システムの機器構成は,次の事を優先し,現場スタッフにも簡単に聞きの接続が出来るよう配慮している。\r\n①必要な機材の数を減少する。\r\n②機器間の通信を無線化し,ケーブルの接続数を減少する。\r\n③ノートパソコンなどのバッテリー駆動が可能な機器を利用し,電源ケーブルの本数を減少する\r\n実際に遠隔授業に必要な機器の構成は図1ようになっている。\r\n図1 遠隔授業に必要な機器\r\n 施設で接続作業は,無線LANルータのLANケーブルを施設内のHABに接続する作業と無線LANルータの電源ケーブルをコンセントに接続する作業の二つとなり,専門知識の無い現場スタッフでもマニュアルに従って作業を行うことが十分可能である。また,バッテリー駆動のノートパソコンと無線LAN・無線ヘッドセットを利用することにより,テレビ会議システムで会話を行いながら,施設内を自由に移動して利用者の様子を学生に紹介できる事が可能となる。\r\n 今回の検証では,遠隔授業を依頼した施設に出向き,事前に接続・通信テストを行ったが,将来的には海外などの遠方施設に必要な機器を送付し,施設スタッフだけで遠隔授業の準備が可能となる事が十分可能と考えられる。\r\n「操作の簡素化」\r\n機器の接続に関しては,マニュアルを参考に現場スタッフだけで実現することが可能だが,パソコンの操作に関しては現場スタッフのITスキルに頼ることになる。遠隔操作の実施までには,「パソコンの起動」-「TV会議システムソフトウェアーの起動」-「会話相手の選択とコネクト」などの処理が必要となる。これらの操作は,決して難しい事ではないが,現場スタッフのITスキルによっては,困難な場合もある。また,想定外のトラブルが発生した場合,現場では全く対応不能となる。\r\n そこで,本学からインターネット回線を利用して施設内のコンピュータを遠隔授業する事が可能な,「リモートコントロールソフト」をノートパソコンにあらかじめインストールし遠隔授業に必要な操作を,肩代わりすることで遠隔授業を実現することにした。現場では,パソコンの電源をONにすることさえ出来れば,その後の操作は,全て大学側から行う事が可能となる。これにより,突然のトラブルへの対応が可能となり,施設スタッフへの負担が大幅に軽減された。一般的にリモートコントロールソフトウェアーを利用するためには,固定IPアドレスやネットワーク環境の調整が必要になり,手軽に導入することが不可能であるが,先に述べたVPNを利用することにより仮想的な固定IPアドレスやプライベートネットワークを構築することが可能となり,どのようなネットワーク環境の施設であっても,相手側コンピュータの遠隔操作が可能となる。\r\nIV 利用システム\r\n TV会議システムに利用するソフトウェアーとして,市販・無料配布されている次の6種類のソフトウェアーの動作を確認し,各ソフトの動作環境・映像/音声のクオリティー・安定性などについて検証を行った。\r\n〈検証したソフトウェア〉\r\n● AcitvePost G-suite\r\n● iChat\r\n● RemoteCaM\r\n● Sight speed\r\n● Skype\r\n● Softfoundry Vmeet\r\n 検証方法として,\r\n ①100Mの有線LANで接続されたネットワークを利用した最高クオリティーの映像/音声の検証。\r\n ②ADSL回線とVPNを利用したネットワーク(実行速度約3Mbps)を利用した低速回線時の映像/音声の検証。\r\n ③無線LNAを利用して,通信距離の延長,障害物による電波状態の悪化による通信遮断状態からの復帰テスト を行った。\r\n 検証の結果,映像・音質の品質ではiChatが最もクオリティーが高く,次にSkypeが優れていた。それ以外のソフトウェアーは,画像の解像度が低く通話相手の表情を理解するのに不十分なクオリティーであった。また,全画面表示が可能なソフトウェアーもiChatとSkypeの2つのみであり,それ以外のソフトウェアーは小さな小窓による表示しか対応していない。 iChatとSkypeは,両者とも相手の表情を理解するのに十分な映像クオリティーがあり,通信品質としては十分実用可能であった。そこで,これら2種類のソフトウェアーを実際の福祉施設で遠隔授業に利用し本システムの検証作業を行った。検証に利用した機材構成は次の通りである。\r\nV 通信機器の検証\r\n 一般的にIEEE802.11gなどの無線LANの到達距離は,直線で100m~200mと言われている。しかし,その数値はデータ転送が可能な距離であり,テレビ電話を利用した高品質な通話が可能な距離は,それより短くなる。本システムでは,無線LAN接続されたノートパソコンを施設内で持ち運び,施設内の様々な情景を撮影しながら移動することを想定しているため,無線LANを用いて高品質な通話が可能な距離を把握しておく事が重要となる。そこで, IEEE802.11gを利用した無線LANを利用して電波の到着距離の測定を行った。\r\n 測定の結果,距離が伸びるに従って,通信速度が低下し映像のクオリティーが低下するが,直線距離で約30mまでは,話し手の表情を理解する事が可能である事が確認できた。 30mを超えると画像の乱れが目立ち始め40m付近で画像が停止状態になった。ただし,音声通話は継続して利用が可能であり,完全に接続が解除されるのは, 50m以上離れた地点であった。これは,施設の大ホールなどでも利用可能な距離であり,施設内の移動は十分可能だと言える。iChatとSkypeの両者を比較した場合,動画のなめらかさ,画像の細かさでiChatの方が優れており,好印象を得た。\r\n 拠点間に障害物がある場合,障害物の厚みや大きさによって通話可能距離が変化する。しかし,壁1枚隔てた隣部屋程度であれば十分通話可能であった。また,講師がノートパソコンから離れていても明瞭な通話が出来るようにBluetooth無線ヘッドセットを利用しているが,ヘッドセットの通話可能距離を測定したところ,約15mが通話可能距離であることが確認された。\r\nVI 遠隔授業の実施\r\n 検証結果を基に,特別養護老人ホームTとM保育園の協力を得て,本システムを利用した遠隔授業を実施し,システムの実用性と遠隔授業の教育効果について検証を行った。本システムの最終目標は,必要な機器の接続を現場スタッフのみで実施することにあるが,本検証では事前に施設に伺い,装置の設定や接続テスト,遠隔授業の講義内の打ち合わせなどの作業を行っている。\r\n 老人ホームTは, 100名の収容規模を誇る大型の福祉施設で鉄筋コンクリート建築の4階建ての施設であり,リハビリ室・食堂・浴室などの共用スペースのあるフロアーを利用して遠隔授業を行った。事前の接続テストでは,約1500平米のフロアー全域に無線LANの電波が到着しており,エレベーター内・非常階段・浴室などの厚い壁に囲まれた場所では,通信が途切れることがあったが,それ以外の場所では鮮明な通話が可能であった。M保育園は0~3歳までの児童を扱う定員15名の小規模施設であり,施設内は全域で無線LANによる鮮明な通話が可能であった。\r\n Ⅵ.1 遠隔授業の内容\r\n 本研究の目的は遠隔授業を利用する事により教科書やビデオ教材を利用した教育に比べ学生への現場の実情をよりリアルに学生に伝える事である。これを実現するために,現場の状況や利用者の生の声を学生に伝える事が可能となるカリキュラムを用意する必要があり,具体的な内容としては,施設の概要や目的・職員の業務内容・利用者の状況・施設職員や利用者と学生のコミュニケーションなどである。今回の,遠隔授業では,事前に施設職員と打ち合わせ行い,次のようなカリキュラムで遠隔授業を行った。\r\n① 講師職員の自己紹介\r\n② 施設概要の紹介(施設の規模,利用者の状況,職員の役割・施設設備など)\r\n③ 利用者の1日のスケジュールの紹介\r\n④ 施設内の各フロア一に移動して各フロアの説明や利用者へのインタビュー\r\n⑥ 各イベントの紹介(老人ホームTの場合,リハビリ・手遊び・食事・入浴など/保育園Mの場合,子どもだちとのお遊戯・ダンス・トイレ練習など)\r\n⑥ 利用者と接する時の注意点について\r\n⑦ 援助者・保育士として従事していて嬉しいこと・楽しいことについて\r\n⑧ 講師職員から学生へのアドバイス\r\n⑨ 学生からの講師職員への質疑・応答\r\n⑩ 利用者や児童と学生のコミュニケーション(会話)\r\n図2 遠隔授業の映像\r\n 上記のカリキュラムを実現するために,各イベントの実施時間を講義時間に合わせて変更するなどの協力をお願いした。遠隔授業を受講する学生は,本学のPC教室で授業を行い,二人に1台設置されている講師画面の表示ディスプレイを通して講師職員の映像を確認することができる。\r\n図3 大学内での遠隔授業受講の様子\r\n Webカメラの接続されたパソコンは,教員用デスクに設置しており,施設に設置されているパソコンには,大学の教員が普段見ている学生の状況と同じ映像が映し出される。学生から講師職員への質疑や利用者とのコミュニケーションでは,会話を希望する学生が教員デスクに移動し,カメラに向かって会話を行う。\r\n図4 施設利用者と学生のコミュニケーション\r\nⅥ.2 アンケート調査\r\n遠隔授業の開催にともない,学生に下記のアンケートを実施した。\r\n表1 アンケート内容\r\n表2 設問:今までに遠隔授業を受けたことがありますか?\r\n 約80%の学生が,遠隔授業が初体験であった。実際に授業ではテレビ電話を通じて遠隔地の人と会話ができることに興味を持ち,普段より集中して授業を受講している学生の姿が確認された。\r\n表3 設問:音声は,明確に聞き取れましたか?\r\n とても良い・良いを合計すると45.6%の学生は音声が聞き取れたと感じている。また,17%の学生は聞き取りにくいと感じている。実際に,授業中に音声が途切れることや,児童達の騒ぎ声が原因で講師の声が聞き取りにくい場面があった。しかし,普段の授業に比べ学生の受講態度が良く教室内は静かであったため,音声が不鮮明な時もあったが,全体を通したイメージでは相手の意見を理解するには十分のクオリティーであった。\r\n表4 設問:画像は,見やすかったですか?\r\n とても良い・良いを合計すると,57.7%の学生が見やすかったと回答している。実際には,音声が乱れる時間よりも画像が停正したり,ぶれる時間の方が多かったが,音声が聞こえている限り,授業の理解度には大きく影響しないため,この様な結果になったと考えられる。\r\n表5 設問:画像の品質は,施設の状況を理解するのに十分でしたか?\r\n とても良い・良いを合計すると,67.5%の学生が施設の状況を理解するのに十分な画像品質だったと回答している。同じ,画像に関する前の設問に比べ10ポイントも良い結果になっている。\r\n表6 設問:解説者の解説は,わかりやすかったですか?\r\n福祉施設の職員は,多くの人と接しコミュニケーション能力が高い人材が多い。今回,遠隔授業の講師をお願いした職員も,施設長から人とのコミュニケーションが得意な職員を推薦してもらい,わかりやすく解説してくれた事により,70%以上の満足度が得られたのだと考えられる。\r\n表7 設問:解説を聞いた施設に興味を持ちましたか?\r\n 本研究の目的一つに,遠隔授業を通じて,福祉施設を理解し興味・関心を学生に抱かせる事があげられるが,このアンケート結果により,83.7%の学生が施設に興味を持ったと回答している。自由回答にも,「この施設に見学に行きたい」・「この施設でボランティアをしてみたい」といった回答が寄せられており,本研究の目的実現のために遠隔授業が有効である事が実証できたと考えている。\r\n表8 設問:遠隔授業の利用は,理解度の向上に役立つと思いますか?\r\n 遠隔授業が理解度の向上に役立つと答えた人の合計は81.3%,役立たないと答えた人は,0.8%の結果になっており,大多数の学生が遠隔授業は授業の理解度向上に役立つと感じている事がわかる。\r\n表9 設問:今後も,遠隔授業を受講してみたいと思いますか?\r\n 約80%の学生が遠隔授業を受けたことがなく,今回が初体験であったため,テレビ会議システム自体の珍しさから,授業に集中し興味を持って受講する学生が多かった。しかし,同一のクラスで2回の遠隔授業を行った場合,2回目の授業では既にテレビ会議システムに飽きて,授業への集中力が欠けている学生が増えていた。この設問も,70%以上の肯定的な回答を得ているが,同一クラスで複数の遠隔授業を行うと,数値が下がると予測される。\r\n その他に自由記述の回答として次に様な意見が寄せられた。\r\n 「実際の現場をリアルタイムで見る事が出来て,とても良い体験になった」\r\n 「一つ一つの部屋がどのようになっているかが見れて勉強になった」\r\n 「子どもたちと話したり,保育者さんたちの様子が見れて良かった」\r\n 「言葉づかいだけでは解らないことも,この授業では理解する事ができた」\r\n 「子どもがとても可愛かった,子どもだちと触れある機会が欲しいと思った」\r\n 「全国の特色ある施設をたくさん紹介しで欲しい」\r\n 「この施設を見学したいと思った」\r\n 「はじめてテレビ電話を見たが,結構きれいな画質で驚いた」\r\n 「はじめて老人の方と接することができて為になった」\r\n 「参加してくれたお年寄り方が楽しそうだったのが嬉しかった」\r\n 「おばあさんの笑顔が見れたのが良かった」\r\n 「資料や写真を見て学習するより身近に感じた」\r\n このように,多くの学生から遠隔授業に対して好評な意見やアンケート結果が得られている。しかし,「音声にタイムラグがある」「たまに,音声が途切れる事があり聞きずらかった」などの否定的な意見も寄せられていた。特に,予備校や他の施設で衛星回線などを利用したテレビ会議システムを体験した事のある学生からの音声・映像の品質に不満を感じる意見が多かった。しかし,本研究の目的はブロードバンド回線がある施設で,手軽にテレビ会議システムを実現し,福祉現場の状況を学生に伝える事であり,その目標はアンケートの集計結果からも十分実現できたと考えている。\r\nⅦ おわりに\r\n 今回の検証により,無線LAN ・ ノートパソコン・ブロードバンド回線を利用した福祉施設からの遠隔授業が実際に運営可能であることや,福祉現場からの遠隔授業が大学教育において,十分な価値がある事が確認された。\r\n 講師をお願いした福祉現場のスタッフの方からは,「学生さんにとって現場のリアルな声を聞いて様子を見ることができる事業はとても大きな学びになると感じた」「実習に出る前に,遠隔授業を受ければ,不安を軽減する事も出来るし,実習の準備に役立つと感じた」「現場を見ることが何より大きな学びになると思う」といった遠隔授業が学生教育に有効であるという意見が寄せられた。今後は,福祉施設と協力したカリキュラムの整備や遠隔授業の講師を引き受けてくれる福祉施設の開拓に取り組む必要がある。\r\n また,利用した機材に関しては,機動性を優先したため用意したノートパソコンが小型であり,内蔵スピーカーでは大きな音が出ないという問題があった。特に,高齢者との会話では高齢者の聴力が弱くノートパソコンの小さなスピーカーの音では十分に音声を伝えられない,保育園では子供たちの騒ぎ声が大きく,講師の話し声が良く聞き取れないなどの状況があった。今後は,遠隔授業を行う施設や利用者の状況によって,スピーカーやマイク・画面の大きさなど適切な機器を選ぶ必要が感じられた。\r\n 謝辞\r\n 本稿を書くにあたり,施設を提供して頂いた,高齢者施設・保育施設のスタッフの皆様方,遠隔授業に参加して頂いた施設利用者・児童の父兄の皆様方に,この場を借りて厚くお礼申し上げます。\r\n参考文献\r\n1)西堀ゆり F高等教育におけるeラーニング」情報処理教育研究集会講演論文集 平成15年 724ページ\r\n2)管正彦 佐藤肇 田口哲 高柳滋 大内定 高久宏一 濱地秀行「簡易型遠隔授業・遠隔会議システムに関する研究」北海道教育大学情報処理センター紀要 平成15年 37~42ページ\r\n3)小林悦雄 長島忍 早瀬光秋「遠隔授業と生涯学習(4):ウェブを用いたオンライン試験システム(WebASC)の開発と利用」立教大学コミュニティ福祉学部紀要 平成14年 37~58ページ\r\n"}]}, "item_creator": {"attribute_name": "著者", "attribute_type": "creator", "attribute_value_mlt": [{"creatorNames": [{"creatorName": "番匠, 一雅"}], "nameIdentifiers": [{"nameIdentifier": "223", "nameIdentifierScheme": "WEKO"}]}]}, "item_files": {"attribute_name": "ファイル情報", "attribute_type": "file", "attribute_value_mlt": [{"accessrole": "open_date", "date": [{"dateType": "Available", "dateValue": "2013-03-12"}], "displaytype": "simple", "download_preview_message": "", "file_order": 0, "filename": "2_12.pdf", "filesize": [{"value": "1.9 MB"}], "format": "application/pdf", "future_date_message": "", "is_thumbnail": false, "licensetype": "license_11", "mimetype": "application/pdf", "size": 1900000.0, "url": {"label": "本文(PDF)", "url": 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名前 / ファイル | ライセンス | アクション |
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本文(PDF) (1.9 MB)
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Item type | 紀要論文 / Departmental Bulletin Paper(1) | |||||
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公開日 | 2013-01-21 | |||||
タイトル | ||||||
タイトル | TV会議システムを利用した福祉現場からの遠隔授業の試み | |||||
タイトル | ||||||
言語 | en | |||||
タイトル | The fieldwork in class : Learning Social work by the TV conference | |||||
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キーワード | ||||||
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主題 | 遠隔授業 | |||||
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資源タイプ | departmental bulletin paper | |||||
著者 |
番匠, 一雅
× 番匠, 一雅 |
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著者別名 | ||||||
識別子Scheme | WEKO | |||||
識別子 | 224 | |||||
姓名 | Bansho, Kazumasa | |||||
抄録 | ||||||
内容記述タイプ | Abstract | |||||
内容記述 | 福祉現場の状況を理解するために,福祉現場と大学をテレビ電話などの映像と音声がリンクしたメディアを用いて学生に解説を聞かせることで,リアリティーが高く教育効果の高い指導が行えると考えられる。そこで,本研究では福祉施設や保育施設と本学の教室をインターネット回線で結び遠隔授業を実現する事を目的としている。一般的なノートパソコンや無線LANといった機器を利用することにより,費用的負担や人的負担を極力軽減し多様な福祉施設で手軽に遠隔授業が実現可能なシステムの構築を目指している。実際に,テレビ会議システムの構築・遠隔授業の作業を行い,学生や福祉現場へのアンケート結果からその有用性が確認された。 | |||||
書誌情報 |
田園調布学園大学紀要 en : Bulletin of Den-En Chofu University 巻 2, p. 181-194, 発行日 2007 |