WEKO3
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"「社会福祉士及び介護福祉士法」が2007年11月に改正された。これに伴い社会福祉士養成のカリキュラムの見直しも検討されている。本稿では社会福祉士養成の中核を占める社会福祉援助技術論の基礎的な課題である,(社会福祉援助=ソーシャルワークと介護=ケアワークーの関係)について検討を行った。その中心はこれまでの両者の関係についての主だった議論の整理と,今回の法改正の議論の中で,両者の関係整理がいかに行われたのかの検討である。その結果としては,法改正に向けた議論の中で,介護福祉士=介護に期待される12項目の役割の内,(4)施設・地域(在宅)を通じた汎用性のある能力,(5)心理的・社会的支援の重視,(7)他職種協働によるチームケア,(9)「個別ケア」の実践,(10)利用者・家族,チームに対するコミュニケーション能力や的確な記録・記述力,(11)関連領域の基本的な理解等が注目される。これらは従来,ソーシャルワークに求められる内容とされてきた。そして身体介護に収斂していたケアワーカーの役割が,ソーシャルワーカーとの重複へと変化したと理解できるからである。すなわち,「在り方に関する意見」が示したこれらの内容は,社会福祉士に求められる役割との共通性を示しているのは明らかとなった。", "subitem_description_type": "Abstract"}]}, "item_10002_full_name_26": {"attribute_name": "著者別名", "attribute_value_mlt": [{"nameIdentifiers": [{"nameIdentifier": "1258", "nameIdentifierScheme": "WEKO"}], "names": [{"name": "Nakamura, Toshihide"}]}]}, "item_10002_textarea_29": {"attribute_name": "内容記述", "attribute_value_mlt": [{"subitem_textarea_value": "社会福祉援助技術論の位相\r\nソーシャルワークとケアワークの関係を巡って\r\n中村敏秀\r\nI はじめに\r\n 1987年に施行された「社会福祉士及び介護福祉士法」は,2007年11月に改正された。\r\nこれに伴い社会福祉士養成のカリキュラムの見直しも検討されている。既に2007年3月に発足した「社会福祉士養成課程における教育内容等の見直しに関する作業チーム」は,近日中に検討結果を発表する予定である。\r\n そこで本稿では,社会福祉士養成カリキュラムの見直しを行う際には避けて通られない,社会福祉援助技術論=ソーシャルワークが抱える基礎的課題について検討を行う。\r\nそれは社会福祉士=ソーシャルワーカーと介護福祉士=ケアワーカーの用いる援助技術や業務内容すなわち,ソーシャルワークとケアワークの関係と異同についてである。ここで両福祉士が行う業務め異同を議論するのは, 養成教育の場で説かれる社会福祉援助技術論及び社会福祉士の業務と, 社会福祉施設・機関等で行われる援助の現実の間には埋めがたい断絶があるからである。\r\n 例えば,2003年に日本学術会議第18期社会福祉・社会保障研究連絡委員会が発表した,「ソーシャルワークが展開できる社会システムづくりへの提案」(以降「U18期提案」\r\nと称す)には,次のような記述がある。児童養護施設の児童指導員は,虐待問題等で家族関係の調整等のソーシャルワークの展開が必要とされている。しかし,これを担えていない。こうした社会的要請に応えられない原因の1つは, 社会福祉士をソーシャルワーカーとしてではなしく, 介護職として採用することにあり,これは任用システムの不備であるとしている。すなわち, 養成教育と社会福祉施設の断絶は公然たる事実なのである。\r\n この事実は,秋山(2007)が1995年に社会福祉士を対象に行った一調査で, 社会福祉士が認知されていない理由の第1は, 「業務内容がはっきしりしない=71.7%」という結果を生む原因ともなっている。\r\nこうした事態が生まれる背景には,ソーシャルワーク論等に関る研究者等が,ソーシャルワークとケアワークの関係を理論的・実践的に定置することを回避してきたことにも一因がある。そこで本橋は,ソーシャルワークとケアワークに関るわが国の主な議論の整理を目的とする。その上で,社会保障審議会福祉部会の,「介護福祉士制度及び社会福祉制度の在り方に関する意見」(2006年12月12日)が,このことに関って提案した内容の検討を行う。\r\n 検討に際しては先に示した,「18期提案」と「介護福祉士制度及び社会福祉制度の在り方に関する意見」(2006年12月12日社会保障審議会福祉部会)を中心に取り上げる。これらは,「今後の社会福祉士養成教育のあり方について(提案)」(2006年6月日本社会福祉士養成校協会定期総会議決, 厚生労働省に提出)も含めて,今回の改正に直接的な影響を与えたことによる。\r\nⅡ ソーシャルワークとケアワークの関係\r\n分離論から一部重複論そして統合論へ\r\n社会福祉士が担うソーシャルワークと介護福祉士が担うケアワークの関係をめぐるわが国の主な議論を整理したい。ここでは両者に関る議論の理解を助けるために,以下に述べる亀山等の見解は「分離論」と呼び,京極(1998)等の見解を一部重複論,佐藤(1999)等の見解は統合論と呼こぶことにする。\r\nⅢ 分離論\r\n分離論はソーシャルワークに関する記述に終始し,ケアワークとの関係については全く触れない立場と,亀山(2003)等のその関係を役割論で区分する立場がある。ここでは亀山が,社会福祉士養成校協会監修の社会福祉士のための基礎知識Ⅲで述べている,分離論をみることとする。亀山は,「介護機能を果たす主力は介護福祉士を中心とした施設介護職員,訪問介護員(ホームヘルパー)等の専門職や家庭における介護者である。」と述べている。これに続けて,「社会福祉士は,施設においては生活相談員,在宅においては介護支援専門員(ケアマネージャー)としての役割が期待されている」と役割論を示して分離論の立場を採る。\r\nしかし,同書の1章で澤田(2003)は,「社会福祉士と介護福祉士は,社会福祉を担うりーダーとして,利用者中心の介護を主体的に展開するために,共通に習得しておくべき基本的な知識・技術・理念を共有している」と述べている。さらに続けて,「実態としての介護は,社会福祉援助技術の全般に及びつつあり,社会福祉を基盤とした介護の展開が不可欠になっている」としているのは興味深いものがある。\r\n また笠原(2000)は分離論の立場から,両者は社会福祉の原理と援助の目標では共通し,知識や技術の部分的重複があるとする。その意味からは次にみる京極等と同じく一部重複論であるかのようである。しかし,両者は別個であり統合はないと前置きした上で,「介護福祉は主として身体的な接触のともなうことの多い直接的かつ具体的技術を活用し,サービス利用者の身体的側面や心理的側面さらに,社会的側面からアプローチする。」とする。これに比してソーシャルワークは「主としてケースワークやグループワークなどを駆使し,サービス利用者の社会的側面や心理的側面からアプローチする」とする。その上で両職種を別個とする理由として,①中軸となる援助技術の違い,②役割が異なる,の2点をあげる。しかし,その後に「介護福祉の業務を円滑に遂行するためには,技としての介護技術と介護技術の展開の場に合わせたソーシャルワークが車の両輪のように必要である」とも述べている。ここで笠原が説明し得ているのは,介護福祉士が用いる身体的な接触のともなう直接的・具体的技術をソーシャルワーカーは担わないという点のみである。\r\nⅣ 一部重複論\r\n京極(1998)は,図1を示しながら「ソーシャルワークとケアワークはその性格上,かなりダブっている部分があります」と述べている。すなわち,広義の社会福祉実践はソーシャルワーク実践とケアワーク実践があり,その両者の業務は互いに重複部分を持つとする。\r\n 次に,京極と同じ見解である黒川(1989)は,両者の共通点と相違点を次のように整理する。共通点としては,①社会福祉のクライエントに対する援助方法である,②援助方法は,クライエン卜の成長発達や自己実現を個別的に援助する,③援助手段として,ワーカー,クライエント間の「援助的人間関係」を重視する。をあげる。一方。相違点としては①ケースワークはクライエントの社会関係の障害を,主に「言語表現」手段で解決する,②ケアワークは,身辺自立や社会的自立のできないクライエントの基本的欲求や心理社会的欲求の充足を,介助など具体的サービスの提供で援助する。\r\n図1 京極の福祉サービス臨床の範囲\r\nすなわち,社会福祉実践は社会関係障害を言語で,介護福祉実践は身辺自立の欲求充足を介助で行うことの違いであるとする。しかし,介護福祉士が身辺自立を介護で充足するのは理解できるが,社会的自立に関わる心理社会的欲求の多くは,ケースワーカーと同じく「言語表現」手段に拠るのではないだろうか。その意味では黒川の主張には矛盾が生まれる。\r\nさらに古川(2004)は次のような一部重複論を提起する。古川は人の・存在を,生命-身体システム,人格-行動システム,生活関係-社会関係システムの三つのシステムの総体という枠組みを使い,ソーシャルワークとケアワークの関係について説明する。すなわち「ソーシャルワークについては,これを利用者の生活関係-社会関係システムを中心に人格-行動システムに及ぶ局面に焦点を絞りつつ,利用者の自立生活の支援,社会参加,社会への統合を目標に展開される社会的な援助技術の体系」としている。他方ケアワークは「利用者の人格-行動システムを中心に生命-身体システムや生活関係-社会関係システムにも及ぶ局面に配慮しつつ,食生活・衣生活・住生活という生活の基盤となる諸条件を整備し,利用者の自立的な日常生活の確保を目標に展開される社会的な技術の体系」とする。\r\n図2 古川のソーシャルワークとケアワークの概念\r\n 古川の両者の違いは図2に示したように,両者の一部の領域では重複するとしながらも,中心とするシステムと目標の違いは明らかであり,一部重複論と理解される。\r\nV 統合論\r\n これらの議論に対して佐藤(1999年)は,「ソーシャルワーク機能とケアワーク機能が多分に重なりあってきたのである」と主張する。これは一部重複論に比較すると,「多分に重なりあう」の文言は,大部分が統合されていると理解するのが一般的であろう。事実,「ソーシャルワーカーは,ジェネリックなソーシャルワークを基盤に,医療・公的福祉行政・施設(指導員)・保育・介護(寮母等)というスペシフイックな分野において,より特化された方法・技術を用いて介入する」とする。すなわちソーシャルワークとケアワークの両者はその基盤を同一とし,違いは各分野に分かれたスペシフイックな部分としている。\r\n先に触れた京極等の一部重複論は,両者が相対的に独立した技術と職能とする立場を採ることになる。これに対して統合論の立場である佐藤(2001)は別の箇所で,「社会福祉援助技術と介護福祉援助技術の関係はそれぞれ別個の体系としてあるのではなく(後略)」と述べている。明らかに,統合論と理解できる。\r\n図3 佐藤のソーシャルワーク・ケアワークの概念\r\nさらに岡田(1998)はソーシャルワークとケアワークの関係を簡潔に,ケアを欠いたソーシャルワークは時には抽象的な実効を欠いたものとなる」と述べている。すなわち「専門職としてのホームヘルプには単なる介護サービスに止まらないソーシャルワーク的な要素を含むと理解する」と,両者の統合論を主張する。また二宮(1992)は福祉労働の立場から,援助者による対象者に対する援助過程(福祉労働)は,コミュニケーション労働が中核であるとし,ソーシャルワークとケアワークを分離する立場を採らない。最近では木全(2007)が,「基本的なケアもできないソソーシャルワーカーが,果たして利用者から信頼が得られるのか」と述べながら,ソーシャルワークとケアワークの分離に反意を表明している.\r\nさらに大和田等(2004)は,ソーシャルワークとケアワークの統合論への接近を次のように主張する。ソーシャルワークとケアワークは,①援助目標や援助原理の共通性,②援助の方法や技術に技能,役割の良い類似性③視点や技術,養成,教育過程などの共有と相互補完関係にあるとする。ここでは既述した黒川のように,用いる手段を言語と介助で分離する考えはない。\r\n 以上の議論に従えば,ソーシャルワークとケアワークを分離する根拠は存在しえなく なる。これに関連して宇野(1995)の指摘は傾聴に値する。宇野は「社会福祉援助技術の総論,各論ⅠⅡ(中略)の代表的な教科書を通読してみて強く感じることは,何よりも英米の理論の紹介が中心で,日本の現実や実践のなかから体系化,科学化された形跡が乏しいことです。要するに解釈学の域を出ていないのです。(中略)さまざまに「技術が語られていでも,ほとんど技術としての実態が見えててこないというのが率直な印象です。」と指摘する。こうした指摘をしつつも,宇野は問題解決のための処方箋を示している。医師を例示しながら医師が権威を持つのは,診断,治療を行うとした上で,「処遇計画の策定能力も,実は何らかの領域で実践的な技術の裏打ちが必要なのです。要援護者の状態と利用可能な社会資源に関する的確な判断能力とともに,具体的な福祉サービスの実行能力を兼ね備えている必要があります」とする。それゆえ当然の帰結として,生活指導員や児童指導員ほど,自分も率先してサ¬ビスを行いながら,サービスチーム全体を率いていくという社会福祉士像を示すことができる職種はないのではないでしょうか」と述べている。明らかに「18期提案」と対極をなす議論である。しかし,これを完全に反証した議論は未だ皆無であることも事実である。\r\nVI わが国の福祉実践に即した統合論の構築\r\n次に,伊藤(1997)の我国の社会福祉制度とサービスを視野に入れた見解をみてみたい。これを基に,ソーシャルワークとケアワーグの領域設定をおこない,そこで求められる知識と技術をまとめる。これはわが国の広範囲な社会福祉実践の共通項を探す作業であり,いわば帰納法的な議論となる。\r\n①ソーシャルワークとケアワークの領域の設定\r\nわが国のソーシャルワークについて伊藤は,アメリカで発達した理論を日本に導入されたとした上で,そのプラス・マイナス面を次のように整理する。プラス面は,一定の理論的枠組みを持つ専門的職業として理解され,教育機関の配置と整備がなされたとする。マイナス面は,理論が日本の現状に合わせて修正されずに,実践面での十分な使用に耐えられずに現場職員に混乱を招いたとする。これは先の秋山(2007)の調査と同じである。確かに,社会福祉士と介護福祉士が法的に整備されながら,両者の業務内容の整理と共通理解に至らない事実は,この指摘を免れ得ないことになる。\r\nその上で,アメリカのソーシャルワーク理論の特徴を,方法は面接,領域は精神医療・医療ソーシャルワーク・家族ソーシャルワークで,契約で決められた時間・回数で面接を行うとする。これに比して日本の社会福祉援助技術の特徴は,施設ケアの中で発展してきたとし,わが国の社会福祉実践理論の領域設定を表1のように提案する。これから分かることは全ての領域において,ソーシャルワークとケアワークは夫々の領域において分ち難く存在していることである。\r\n表1 日本の社会福祉実践理論の領域設定\r\nこの六領域の共通性は,生活の質の確保と判断と方針の明確化であり,それを職場チームで共有することにある。この三つの共通性を基盤に,地域に開かれた実践に向かうとする。尚,伊藤は医療福祉の領域で医療ソーシャルワークのみをあげていた。しかし,2000年に介護保険制度が発足し,介護医療型施設や介護老人保健施設等の医療施設には介護福祉士の進出が著しい。さらには一般医療機関にも介護福祉士の進出も始まっている。これは医療福祉領域に治療と看護に加え,生活援助の介護が位置づけられたことになる。ただし,これは無条件に評価できるものではない。医療費抑制政策による,人権費削減の一面も見逃せないこ。ともあれこうした領域設定は,自らの帰属する場と役割の理解を得やすくさせる\r\n②援助に必要な知識と技術\r\n次に,各々の領域の援助に共通する知識と技術の特定が必要となる。これについて伊藤が提案する,援助に必要な五つの知識と三つの技術から検討を始めたい。五つの知識とは,1.対象理解の重要性 2.個人への援助と理解 3.家族の援助と理解 4.集団への援助と理解 5,地域の理解と援助である。また知識を具体化する技術としては,介護と相談と生活援助(言葉かけ・世間話し・一緒に散歩・外出同伴・申請手続き代行・書類作成)を提案する。ここからは社会福祉実践と介護福祉実践が,共通の知識と技術を用いるとしているのがわかる。\r\n表2 援助に必要な五つの知識と三つの技術\r\nすなわち「18期提案」で例示された福祉施設の児童指導員や生活指導員は,加藤(2003)が主張するように,ソーシャルワークを自らの業務に含みつつケアワークの役割を遂行しているのである。\r\nこのように考えるならば, L.Margolin (1997)のソーシャルワークに関する次の論述は傾聴せざるを得ない。「特定のグループや人たちだけがソーシャルワーカーがすることをしているわけではないということである。医師,心理学者,全ての種類のカウンセラー,さらには看護師,農業地域への出張相談員,大学で家政学を学んだ人までが,ソーシャルワーカーとしてふるまうことができる」\r\nⅦ 今回の法改正にみられるソーシャルワークとケアワークの接近\r\n次に,法改正に関わる議論を集約した,「介護福祉士制度及び社会福祉制度の在り方に関する意見」(2006年12月12日 社会保障審議会福祉部会)の中で示された両者に関する議論の検討を行う(以降,「在り方に関する意見」と称する)。\r\n ①求められる介護福祉士像\r\n 「在り方に関する意見」では両福祉士の期待される役割が示された。介護福祉士に関して同部会は,2006年7月の「介護福祉士のあり方及びその養成プロセスの見直しに関する検討会」(以降,検討会と称する)で示された,「求められる介護福祉士像」の12項目を踏襲するとしている。12項目は①尊厳を支える,②現場で必要とされる実践能力,③これからの介護ニーズ,政策に対応できる,④施設・地域(在宅)を通じた汎用性のある能力,⑤心理的・社会的支援の重視,⑥予防からリハビリテーション,看取りまで,利用者の状態の変化に対応できる,⑦他職種協働によるチームケア,⑧一人でも基本的な対応ができる,⑨「個別ケア」の実践,⑩利用者・家族,チームに対するコミュニケーション能力や的確な記録・記述力,⑪関連領域の基本的な理解,⑫高い倫理性の保持,となっている。\r\n②社会福祉士に求められる役割\r\nー方,「在り方に関する意見」では,社会福祉士制度の現状と課題を,次のように分析する。「社会福祉士を取り巻く状況の変化の中で,社会福祉士の活躍が期待される分野は,地域を基盤とした相談援助,地域における就労支援,権利擁護等の新しいサービスの利用支援,新しい行政ニーズへの対応など,拡大してきているが,社会福祉施設等や福祉事務所における社会福祉士の任用・活用の状況は,低調。」\r\nこうした現状認識の上で,社会福祉士に求められる役割として次の3点をあげている。\r\n 「①福祉課題を抱えた者からの相談に応じ,必要に応じてサービス利用を支援するなど,その解決を自ら支援する役割,②利用者がその有する能力に応じて,尊厳を持った自立生活を営むことができるよう,関係する様々な専門職や事業者,ボランティア等との連携を図り,自ら解決することのできない課題については当該担当者への橋渡しを行い,総合的かつ包括的に援助していく役割,③地域の福祉課題の把握や社会資源の調整・開発,ネットワークの形成を図るなど,地域福祉の増進に働きかける役割」\r\nこの内容は以下の「18期提案」のソーシャルワークの定義を踏襲しつつ,発展させたものと言えよう。\r\n 「ソーシャルワークとは,社会福祉援助のことであり,具体的には人々が生活していく上での問題を解決なり緩和するこことで,利用者の質の高い生活(QOL)を支援していくことである。そのため,ソーシャルワークは,人々が社会サービスを活用しながら,自らの力で生活問題を解決していくことを支え,人々が生活する力を育むよう支援することを言う」\r\n③介護福祉士と社会福祉士に期待される役割の接近\r\n既述したように,「検討会」が示す「求められる介護福祉士像」の12項目の幾つかは耳目を集める。ここでは,④施設・地域(在宅)を通じた汎用性のある能力,⑤心理的・社会的支援の重視,⑦他職種協働によるチームケア,⑨「個別ケア」の実践,⑩利用者・家族,チームに対するコミュニケーション能力的な記録・記述力,⑪関連領域の基本的な理解等に注目したい。12項目の内でも特にこれらは,従来までの身体介護に収斂したケアワークから,ソーシャルワークに求められる内容と重複する部分と理解できるからである。すなわち,「在り方に関する意見」が示したこれらの内容は,社会福祉士に求められる役割との共通性を示しているのは明らかである。\r\n さらに付け加えるならば,改正法律案に対する附帯決議(2007年4月26日参議院厚生労働委員会)の7項目では,専門社会福祉士及び専門介護福祉士の仕組みの提案がなされた。それらを前提に,「介護福祉士をはじめ,関連分野専門職が社会福祉士となるための必要な履修認定等について検討すること。」の文言の持つ意味は大きいものがある。\r\nこのことは,他職種とともに介護福祉士は,社会福祉士への移行が可能であると位置づけられたからである。\r\nとはいえ,この事柄を過大評価しすぎる必要もない。横田(2007)の指摘する以下の文面は,現在の社会福祉とこれに関る全ての職種に,頚木のごとく纏わりづく事実であるからである。「ニューエコノミート」では,好むと好まざるごとにかかわらず,ヒューマニズムよりコスト削減が優先される。このような状況下で援助実践を行うためには,コス卜削減に向けてのアピールをしなければならない。これは職種にかかわらず,組織に属するスタッフに課せられた枠組みとなる。\r\n この言に従うならば,コスト削減の思惑も含めたケアワーカーに対するソーシャルワーカー機能の拡大と理解できるからである。\r\nⅧ わが国のソーシャルワークのこれからの道標\r\n ①米・英に我国の進路を探る\r\n わが国のソーシャルワークの今後の進路を示唆する例を,イギリスとアメリカにみておきたい。最近のイギリスの動:向:について矢島(2004)は,次のように報告している。イギリスではCareStandards Act (2000)に基づきGeneral Social Care Councilし(GSCC)が設立された。これはソーシャルワークとケアワークを近代化しようとする意図に基づくものである。今,このGSCCはソーシャルワーカーとケアワーカーをソーシャルケア従事者としてトータルに登録し,その質の向上を図ろうとしているとする。 一方,宮本(2004))はアメリカの動向を次のように述べる。福祉予算削減の中で修士レベル(MSW)が,最上級ライセンスの臨床ソーシャルワーカー(Licensed ClinicalSocial Worker)を取得し,ソーシャルワーカーの中では最も高所得な個人開業へと向かう。これについてはHarry Specht とMark E.Courtney(1996)も同じく,アメリカにおけるソーシャルワーカーは,「ここ10年あまりに児童支援や,ホーム・ヘルプあるいは児童虐待予防等のためのサポート,アドボケート,愛情,信頼,共感,自給自足,調停等のこうした価値あるものに取り組む者の相当数が減少している。そして多くのソーシャルワーカー達は,本来,貧しく傷つきやすく保護や弁護を必要とする人々から,これらを必要としない中産階級のサイコセラピーに取り組んでいる」と告発する。\r\n 宮本はこれに反比例する形で,学士レベルの(BSW)のSWが心理学や社会学専攻した者と共に,ヒューマンサービス・ワーカーとして公的サービスや民間非営利サービス領域で増加しつつあると述べる。このようにイギリスとアメリカの例を見るならば,我国がどちらの道を選択すべきかは明らかであろう。\r\n ②ソーシャルワーカーは何ができ,何をするべきか\r\n遠藤(2004)は高齢化社会に入ったわが国において,介護・支援のための基礎的福祉施策の充実の緊急性を認めるが,それだけでは充分ではないとする。これからは,多くの高齢者や障害者はただ援助や介護を受けるだけの弱者ではなく,生き甲斐を求め,自已の能力・健康に適応しつつ働き,社会に貢献したいと願う人々であるとする。こうした高齢者や障害者が,まさに自立した内発的な地域・街づくりの取り組みにより,働く場の確保と経済的自立を可能としつつある事例を報告している。これは,「在り方に関する意見」に従えば障害者や高齢者の働く場と経済的自立を可能とする取り組みは,ソーシャルワーカーの役割であり固有の業務となろう。\r\nしかし,A市の埋立地問題に端を発するごみ処理問題は,障害者に働ぐ場としてのリサイクル事業を立ち上げて解決をみたが,その中心を担ったのは清掃事業に働く人々であった。この報告は,改めて「ソーシャルワーカーは何かでき,何をするべきか」の実践的回答を求めていることになる。すなわち制度と組織に埋没したソーシャルワーカーの現状打解こそが課題として突きつけられていることだけは間違いない。\r\n こうした中で「18期提案」は,わが国の社会福祉施設や機関でソーシャルワーカーが求められているにもかかわず,任用制度化がなされていないためにソーシャルワークが展開できないとしている。このことについては宇野(1995)の,「ある資格が社会的に認知されに尊重されるための原理は極めて単純です。人々に良いサービスを提供し,役立つことを立証することです。」の言葉で十分であろう。\r\nⅨ まとめ\r\nソーシャルワーカー養成の中核をなす社会福祉援助技術論が,ソーシャルワークとケアワークの関係については理論的・実践的な定置を探り当てていない事実を論証した。\r\nしかし,今回の法改正に関る議論では,両福祉士に期待される機能を明示する中で,その接近と重複を確認することとなった。この事実は,わが国の社会福祉実践を素直に見るならば自明となろう。遅まきながら,統合論に向けた一歩を踏み出したと言える(例えコスト削減に眼目があろうとも)。\r\n改めて,わが国の社会福祉実践の場から積み上げたソソーシャルワークとケアワークの関係整理と,これに依る社会福祉援助技術論と養成教育の再構築が求められていると言える。\r\n最後に我国のソーシヤルワークが立つ現在の地平について , 大橋(2004)の次の一文で確認しておきたい。「日本の社会福祉の「場」においては,(中略)ケアワークを中核としつつ,ソーシャルワークの機能を展開することが最も実際的であった。それは,入所型社会福祉施設における支援においてはもとより,地域自立生活支援においても在宅福祉サービスによるケア機能が重要な意味を有することになる。しかしながら,大学等で教えられるソーシャルワーク理論においてはカウンセリング的機能を中核としたソーシャルワークに引きつけられている。この”乖離”を社会福祉方法・援助技術研究者やソーシャルワーク研究者はどのように解決しようとするのか,今後のソーシャルワークの理論化の大きな課題の一つである。」\r\n\r\n引用・参照文献\r\n1)秋山智久『社会福祉専門職の研究』ミネルバ書房 2007年\r\n2)伊藤淑子『社会福祉援助技術とはなにか』一橋出版 1997年\r\n3)宇野裕『職業としての福祉-21世紀の福祉マンパワーを求めて-』中央法規出版 1995年 43ページ\r\n4)遠藤宏一「保健・医療・福祉とつなぐ地域づくり」窪田暁子 高城和義編『福祉の人間学』勤草書房\r\n 2004年\r\n5)大橋謙策「わが国におけるソーシャルワークの理論化を求めて」『ソーシャルワーク研究J Vol .31 No1 相川書房 2005年 19ページ\r\n6)大和田猛編著『ソーシャルワークとケアワーク』大和田猛「ソーシャルワークとケアワーク」中央法規出版 2004年 228ページ\r\n7)岡田藤太郎『社会福祉学汎論一ソーシャル・ポリシーとソーシャルワーカー』相川書房 1998年 108ページ\r\n8)亀山幸吉 介護の概念社会福祉士養成校協会監修『社会福祉士のための基礎知識Ⅲ』中央法規出版 2003年 276ページ\r\n9)笠原幸子「介護福祉におけるソーシャルワークの役割」一番ケ瀬康子監修『新・介護福祉学とはなにか』 ミネルバ書房 2000年 160ページ\r\n10)京極高宣『改訂社会福祉学とはなにか 新・社会福祉原論 』全国社会福祉協議会 1998年 88ページ\r\n11)黒川昭登『現代介護福祉論-ケアーワークの専門性-』1998年\r\n12)木全和己「社会福祉施設における社会福祉専門職としての価値」宮田和明他編『社会福祉専門職論』中央法規出版 2007年 141ページ\r\n13)佐藤豊道「介護福祉の概念と枠組み」古川孝順 佐藤豊道 奥田いさよ編著『介護福祉』有斐閣 1999年 27~43ページ\r\n14)佐藤豊道「社会福祉援助技術と介護福祉士」根本博司・佐藤豊道編著『社会福祉援助技術』建帛社 2001年10ページ\r\n15)澤田信子「社会福祉士にとっての介護」『社会福祉士養成校協会監修の社会福祉士のための基礎知識珥』 中央法規出版:269~270ページ\r\n16)二宮厚美「福祉マンパワー政策と福祉労働の専門性」『総合社会福祉研究』第5号 総合社会福祉研究所 1992年 2~16ページ\r\n17)古川孝順「介護福祉政策の展望」古川孝順・佐藤豊道・奥田いさよ編『介護福祉』1996年\r\n18)宮本義信『アメリカの対人援助専門職-ソーシャルワーカーと関連職種の日米比較-』ミネルバ書房 2004年\r\n19)矢島真希「イギリスのソーシャルワーク専門教育について」(ソーシャルワーク研究j Vol .30 No1 相川書房 2004年 52~59ページ\r\n20)横田恵子「ソーシャルワーク実践教育における援助技術教育-普遍的モデルの多元的再検討-」横田恵子編『解放のソーシャルワーク』世界思想社 2007年 20ページ\r\n21) Harry Spec]h.t \u0026 Mark E. Courtney 「UNFAITHFUL ANGELS-HOW SOCIAL WORK HAS ABA NDONED ITS MISSION 」 The Free Press 1994年 160~161ページ\r\n22)レスリー・マエゴリン 中河伸俊他訳『ソーシャルワークの社会的構築一優しさの名のもとに―』 L. Margo linUNDER THE COVER KINDNESS-The Invention of Social work University Press of Viginla 1997年\r\n"}]}, "item_creator": {"attribute_name": "著者", "attribute_type": "creator", "attribute_value_mlt": [{"creatorNames": [{"creatorName": "中村, 敏秀"}], "nameIdentifiers": [{"nameIdentifier": "199", "nameIdentifierScheme": "WEKO"}]}]}, "item_files": {"attribute_name": "ファイル情報", "attribute_type": "file", "attribute_value_mlt": [{"accessrole": "open_date", "date": [{"dateType": "Available", "dateValue": "2013-03-12"}], "displaytype": "simple", "download_preview_message": "", "file_order": 0, "filename": "2_2.pdf", "filesize": [{"value": "1.7 MB"}], "format": "application/pdf", "future_date_message": "", "is_thumbnail": false, "licensetype": "license_11", "mimetype": "application/pdf", "size": 1700000.0, "url": {"label": "本文(PDF)", "url": "https://dcu.repo.nii.ac.jp/record/17/files/2_2.pdf"}, "version_id": "0e5d1ccf-abfe-4977-ae58-a913d0b86496"}]}, "item_keyword": {"attribute_name": "キーワード", "attribute_value_mlt": [{"subitem_subject": "ソーシャルワーク", "subitem_subject_scheme": "Other"}, {"subitem_subject": "ケアワーク", "subitem_subject_scheme": "Other"}, {"subitem_subject": "社会福祉援助技術論", "subitem_subject_scheme": "Other"}, {"subitem_subject": "分離論から統合論へ", "subitem_subject_scheme": "Other"}]}, "item_language": {"attribute_name": "言語", "attribute_value_mlt": [{"subitem_language": "jpn"}]}, "item_resource_type": {"attribute_name": "資源タイプ", "attribute_value_mlt": [{"resourcetype": "departmental bulletin paper", "resourceuri": "http://purl.org/coar/resource_type/c_6501"}]}, "item_title": "社会福祉援助技術論の位相 : ソーシャルワークとケアワークの関係を巡って", "item_titles": {"attribute_name": "タイトル", "attribute_value_mlt": [{"subitem_title": "社会福祉援助技術論の位相 : ソーシャルワークとケアワークの関係を巡って"}, {"subitem_title": "A Study on the Relationship between Socialwork and Carework", "subitem_title_language": "en"}]}, "item_type_id": "10002", "owner": "14", "path": ["13"], "permalink_uri": "https://dcu.repo.nii.ac.jp/records/17", "pubdate": {"attribute_name": "公開日", "attribute_value": "2013-01-21"}, "publish_date": "2013-01-21", "publish_status": "0", "recid": "17", "relation": {}, "relation_version_is_last": true, "title": ["社会福祉援助技術論の位相 : ソーシャルワークとケアワークの関係を巡って"], "weko_shared_id": -1}
社会福祉援助技術論の位相 : ソーシャルワークとケアワークの関係を巡って
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名前 / ファイル | ライセンス | アクション |
---|---|---|
本文(PDF) (1.7 MB)
|
Item type | 紀要論文 / Departmental Bulletin Paper(1) | |||||
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公開日 | 2013-01-21 | |||||
タイトル | ||||||
タイトル | 社会福祉援助技術論の位相 : ソーシャルワークとケアワークの関係を巡って | |||||
タイトル | ||||||
言語 | en | |||||
タイトル | A Study on the Relationship between Socialwork and Carework | |||||
言語 | ||||||
言語 | jpn | |||||
キーワード | ||||||
主題Scheme | Other | |||||
主題 | ソーシャルワーク | |||||
キーワード | ||||||
主題Scheme | Other | |||||
主題 | ケアワーク | |||||
キーワード | ||||||
主題Scheme | Other | |||||
主題 | 社会福祉援助技術論 | |||||
キーワード | ||||||
主題Scheme | Other | |||||
主題 | 分離論から統合論へ | |||||
資源タイプ | ||||||
資源タイプ識別子 | http://purl.org/coar/resource_type/c_6501 | |||||
資源タイプ | departmental bulletin paper | |||||
著者 |
中村, 敏秀
× 中村, 敏秀 |
|||||
著者別名 | ||||||
識別子Scheme | WEKO | |||||
識別子 | 1258 | |||||
姓名 | Nakamura, Toshihide | |||||
抄録 | ||||||
内容記述タイプ | Abstract | |||||
内容記述 | 「社会福祉士及び介護福祉士法」が2007年11月に改正された。これに伴い社会福祉士養成のカリキュラムの見直しも検討されている。本稿では社会福祉士養成の中核を占める社会福祉援助技術論の基礎的な課題である,(社会福祉援助=ソーシャルワークと介護=ケアワークーの関係)について検討を行った。その中心はこれまでの両者の関係についての主だった議論の整理と,今回の法改正の議論の中で,両者の関係整理がいかに行われたのかの検討である。その結果としては,法改正に向けた議論の中で,介護福祉士=介護に期待される12項目の役割の内,(4)施設・地域(在宅)を通じた汎用性のある能力,(5)心理的・社会的支援の重視,(7)他職種協働によるチームケア,(9)「個別ケア」の実践,(10)利用者・家族,チームに対するコミュニケーション能力や的確な記録・記述力,(11)関連領域の基本的な理解等が注目される。これらは従来,ソーシャルワークに求められる内容とされてきた。そして身体介護に収斂していたケアワーカーの役割が,ソーシャルワーカーとの重複へと変化したと理解できるからである。すなわち,「在り方に関する意見」が示したこれらの内容は,社会福祉士に求められる役割との共通性を示しているのは明らかとなった。 | |||||
書誌情報 |
田園調布学園大学紀要 en : Bulletin of Den-En Chofu University 巻 2, p. 1-13, 発行日 2007 |